古見きゅうさん、命懸けの写真集&写真展「TRUK LAGOON」

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コラムニスト:広井 さやか
vol.03 古見きゅうさん、命懸けの写真集&写真展「TRUK LAGOON」


8月6日(木)から銀座のキヤノンギャラリーにてスタートした、「古見きゅう写真展 TRUK LAGOON」。それに先駆け5日の夜に行われた「オープニングパーティー」と、初日6日の夜に開催された「オープニングレセプション」へ行ってきました!
9年にわたって、古見さんが撮り続けたチュークの海底に眠る沈船をまとめた渾身の写真集とその発売と併せて開催されている写真展。普段、月刊ダイバーで見ている古見さんの生きもの愛溢れる写真とは違う、文字通りの命を賭けた、凄みのある写真の数々は「圧巻」の一言です。
スライドトークショーで語られた古見さんの“想い”と様々なエピソード、写真展の様子やオープニングレセプションの模様をご紹介します。


古見さんが沈船に潜るきっかけとなった「富士川丸」の写真の前で

ファンが集まった温かなオープニングパーティー

オープニングパーティーは古見さんの友人でもあり応援隊長の河野透さんが企画し、ダイバーが集まる名店「新橋 BOX」で開催されました。
今回の展覧会は、銀座、札幌、梅田と巡回する予定なのですが、銀座会場はギャラリーのお盆休みなどが重なり、土日の開館がない!という悲しい事態に…。そこで、「有給を取ってでも、この写真展を見に行って欲しい!」と急遽企画したのだそう。
「実は、この写真集は一度白紙になってね。その時のきゅうちゃんの本当に悔しそうな顔は忘れられない。だから、こうして無事に写真集が発売され、開催される写真展は、ぜひたくさんの人に見てもらいたい」と、長年連れ添った夫婦のことを語るように、熱い気持ちを打ち明けてくれた透さん。
その気持ちに応えるかのように、急な企画だったにも関わらず定員オーバーの60名を超える“古見きゅうファン”が集まりました!古見さんを応援するファンの方たちと、「皆さんの応援があってこそ」と感謝を忘れない古見さんとのつながりを感じるその空間は、とても温かいものでした。


河野透さん(左)と古見さんは、本当に仲良しです

古見さんの“想い”が伝わってきたスライドトークショー

20時から約1時間にわたって行われたスライドトークショー。写真集の写真を中心に次々と映し出される写真とともに、写真の説明や背景にあるもの、古見さんが感じたことや苦労したことなどを、語ってくれました。

■ チュークの美しい海

最初にモニターに映し出されたのは、チュークの美しい海の写真。 チュークのバリアリーフは世界でグレートバリアリーフに次ぐ大きさラグーンで、その美しさに会場からは歓声が上がりました。イルカの写真も登場し、「わ〜!」と嬉しそうな声も聞こえましたが、ここで古見さんの衝撃的な告白「イルカ嫌い」に、会場は驚きと笑い包まれました。写真集にも掲載されている写真ですが、本人曰く「適当で愛がない」そうです。笑 水深40m近いところにいることが多いとされるヘルフリッチに水深12mで会ったこともあるというエピソードは、またまた会場を沸かせました。

■ チュークの沈船をすべて撮影しようと決意した理由

そんな美しく、生きものが溢れる海の底に眠る42隻もの沈船(航空機を含む)は、連合艦隊の拠点だったトラック諸島に残された、商船や輸送船が、終戦の1年前の空襲により壊滅した時のもの。
古見さんがこれらの沈船を撮り続けるきっかけとなった「富士川丸」を皮切りに、沈船や船内の様子などを撮影した写真が、次々と紹介されました。
「富士川丸」は、映画「タイタニック」の水中シーンでも使用された、全長130mある巨大な船。水深9mくらいの浅いところに沈んでおり、レジャーダイバーでもその姿を観ることができます。
初めてこの「富士川丸」を見た時のことを忘れられないという古見さん。こんなに大きな船が沈んでいるのかという衝撃と、現実感のないSF映画のように感じたのだとか。そして、写真集と写真展の両方で紹介されている2007年と2011年に撮影された「富士川丸」の写真。二つを比べた時、真ん中にあった煙突が崩落していることが分かりますが、この状況を目の当たりにした時、古見さんの気持ちに変化が訪れたそうです。

「それまでは、魚しか興味がなく沈船はほとんど興味がなかった。半ば、ついでのような感じで撮っていた。でもその船たちは日本の船で、日本の歴史でもある。その歴史の上に立って、それがあって僕たちはいるので、それらがなくなっていく前にその記録を残さなくては—。」


美味しい料理とお酒を片手に、古見さんの話に真剣に耳を傾けていました

■ 命懸けの撮影

こうして始まった、9年間にわたる撮影。お話を聞いていて、本当に命懸けの闘いだったんだ、と思うことばかり。
機雷(海の地雷みたいなもの)を撮影した写真が紹介された時、てっきりもう爆発しないものかと思いきや「それは分からない。爆発するかも。後から考えると怖いよね〜」と言う古見さん。「えーーー!危ない!」と、そこにいる全員が汗をかいたはず^^;
また、「富士川丸」のように浅い水深にあるものもあれば、水深65mに沈む「追風(おいて)」、75mに沈む「葛城山丸」のようなとんでもない水深に沈んでいるものも。「減圧停止が笑ってしまうくらい出た」と言う古見さんにまたしても「笑ってる場合じゃない!」とブーイング。笑
常に減圧症のリスクとの闘いで、「朝起きて身体が動かなかったらどうしよう」と不安になることもあり、生きた心地がしなかったといいます。
また、船内に進入するときも細心の注意とテクニックが必要になってくる。特に、自決した悲しい歴史を持つ「伊号第百六十九潜水艦」は、実際に欧米ダイバーの事故が多く潜水艦の中には侵入してはいけないことになっていたものの、本を作るにあたってはどうしても入らなくてはならないということで、必死の思いで船内に入ったそう。

■ 船に潜るうちに、色々なことを想像できるようになり、船の見方が変わった

「世界で一番夕日が美しい場所だと思うチュークの夕日を見ていた時、きっと70年前も同じ夕日を見ていたのだろうと思った。その瞬間、時間の隔たりがなくなり、そこにいる人たちの気持ちが想像できるようになった」という古見さん。そこから、写真が変わっていったそうですが、
「ただ、撮影は淡々と行った。そこにいた人の景色、匂いは分かるから、淡々とやらないと気持ちが保たない」と、心身ともに本当に闘いであったことを語ってくれました。

「船の中にあった、ビール瓶、お風呂、トイレ…そういったものを撮影しながら、
“きっとこのビールを楽しみに頑張ったんだろう”
“ゆっくりはできなかっただろうが、お風呂やトイレ、一瞬でもふっと息つく時間があったのかな”
そんな風にそこで生きた人たちの生活が見えてきた時、他人事ではなくなってきた」
古見さんの言葉を思い出しながら、それらの写真を見るとまた見え方が変わってきます。


9年の想いを語るには1時間では足りないほど。それでも、古見さんの話しぶりから熱い想いが伝わってきました。

■ 「僕についてきてください」そんな気持ちで潜っている

「歴史を問いただすために潜っているのではなく、そこに残っている人たちの気持ちは絶対にあるはずで、みんな帰りたいはず。残された人たちに『僕についてきてください』という気持ちで潜っている」
ひとつひとつ、言葉を選びながら噛みしめるように話してくれた古見さん。

その想いが形になった、一つのエピソードを紹介してくれました。
以前、朝日新聞に「追風」の写真が掲載された時、一人の女性から手紙が届いたそうです。
その女性のお父さんは「追風」で戦死しており、「追風」は深い場所に沈んでいるため遺骨の回収も行われていない船なのですが、古見さんの写真を見て「父が眠っている船を見れて本当に嬉しく思います」と言ってくれたのだそう。 色々な人たちの想いが船には乗っているんだ、と実感し、さまざまな苦難の中、「チュークの沈船を全て撮影する」という目標を果たす励みにもなったそうです。

2015年は、終戦70年という節目の年であり、色々なことが大きく変わろうとしている時でもあります。
最初から沈船を撮ろうとか、写真集を出そうとか思っていたわけでもなかった古見さんが、このタイミング写真集を発売し、写真展を行うことになったのには、何か導かれたものがあったのかもしれません。
「僕についてきてください」
そんな大きな気持ちによって、海底深くに閉じ込められた、さまざまな記憶と想いをたくさんの人たちの目に触れられるよう形にした古見さん、本当にすごいです!

「この先、船もどんどん崩れていく。その朽ちゆく船に寄り添い生きていきたい。そして、終戦100年の時に僕はギリギリ現役で潜れるはずなので、その時の姿をまた記録に残したい」
心身ともに酷使し、それを形にするための数々の苦難を乗り越え、古見さんが最後に語った新たな夢に、会場は歓声に包まれました!
きっと、会場にいた皆さんにとっても「また30年後、同じように古見さんの『TRUK LAGOON』を見たい!」という夢にもなったのでは?と思いました。

こうして、オープニングパーティーは大盛況で終わりを迎えました。


最後はみんなで恒例の記念撮影!

オープニングレセプションには、豪華写真家が集結!


会場のキヤノンギャラリーです。夜撮影なので暗めですみません!

翌6日から銀座のキヤノンギャラリーで写真展がスタートしました。
会場では、写真集の中から47点が展示されていて、中には1mを超える大きさのパネルもあり、写真集で見るのとはまた違った迫力や凄みがあります。会場全体を暗めにして、スポットライトの照明で写真が浮かび上がるような展示もまた、作品を際立たせています。

その夜に開かれたオープニングレセプションには、豪華な顔ぶれが勢揃い!
司会者がいるわけでもなく、古見さん自らが仕切っていましたが、そのおかげで(?)次々と前に引っぱり出されるカメラマン達。
滅多に見られない2ショットが続々と見られて、その場にいた人は「超ラッキー!」と思ったのでは?もちろん私もその一人です!笑


乾杯の挨拶をしてくれたのは、情熱大陸で古見さんを撮影したムービーカメラマンの古島茂さん


左上は鍵井靖章さん、右上は高砂淳二さん、左下は尾崎たまきさん、右下は中村卓哉さん。
これだけ揃うこともなかなかないのでは…?ちょっとドキドキします。笑

それぞれの時間はほんの少しでしたが、カメラマンのみなさんは、皆さん個性的なので(いい意味ですよ!)、古見さんとの掛け合いもおもしろく、会場には笑いが何度も起きていました。 その中で、皆さんが共通して言っていたのは、本当によくここまで潜って撮った、ということ。それはもう嫉妬するほどだと。
前日のトークショーを聞いていたので、大変さは分かっていましたが、同じカメラマンとして、それも第一線で活躍する皆さんには、その身体への負担や気持ちの部分の辛さが人一倍よく分かるはずですし、その方達の口からそういう言葉を聞くと、「本当にすごいことなんだなぁ」としみじみ思ってしまいました。


最後に、忙しい皆さんを無理矢理引っぱってきて(笑)、集合写真を撮影させて頂きました!
ご協力、ありがとうございました〜♪

古見さんの想いや、伝えたいことがすべて詰まっている写真集「TRUK LAGOON 閉じ込められた記憶」は、好評発売中です!
そして、その中の47点を展示している写真展は、銀座に続き、北海道・梅田で順次開催されます。開催期間が限られていますが、写真展でしか体感できないこともあると思いますので、ぜひ足を運んでみて下さい!

古見きゅう 写真展「TRUK LAGOON 閉じ込められた記憶」
キヤノンギャラリー銀座 日、祝休館
8月6(木)~19日(水)(8~16日は夏期休館)
10:30 - 18:30 最終日15時まで

キヤノンギャラリー札幌 土、日、祝休館
9月3日(木)~15日(火) 10:30 - 18:00 
9月11日(金) 14時よりギャラリートーク

キヤノンギャラリー梅田 日、祝休館
10月1日(木)~7日(水)
10:30 - 18:00 最終日15時まで
10月3日(土) 14時よりギャラリートーク
★銀座と梅田は全日古見さんが在廊予定です!


古見きゅう写真集「TRUK LAGOON 閉じ込められた記憶」

古見きゅう 写真集「TRUK LAGOON 閉じ込められた記憶」
出版社:講談社ARTピース
発売日:発売中
価格:2,500円(税別)
装丁:B5判 / 144ページ

ミクロネシア連峰チューク州(旧トラック諸島)の海底に眠る、太平洋戦争時に沈んだ旧日本軍の艦船。その数、現存するものでなんと42隻。
そこは、レックダイビングの名所として、特に欧米のダイバーたちから人気を集めているが、時とともにその姿は崩れつつあった。それを写真として残すことを決めた古見さんが、42隻の沈船すべてを9年の歳月をかけて撮影したドキュメンタリー作品。

コラムニスト

広井さやか(web担当)
都市型のダイビングショップで、ダイバーデビュー!もちろん、ダイビング器材は、ライセンスを取る前にすべて揃えました。ウェットスーツは、トリコロールカラーでショップ名入り。一度見たら忘れられません。でもそろそろ、かっこいいウェットが着たい・・・笑
好きなもの:海、ダイビング、カメラ、お寿司、東方神起、ジャンプ写真、映画(STAR WARSとロードオブザリングは特別)、読書etc.

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