ダイビングにおける、耳のトラブル①

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コラムニスト:山見 信夫
vol4 耳のトラブル①


「Dr 山見のダイバーズクリニック」は、ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生に解説いただいている、月刊ダイバーの好評連載です。「ダイバーオンライン」では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。第4回目は、多くのダイバーが多少なりとも経験する「耳のトラブル」。大事に至らないよう、耳をいたわるダイビングを心がけてくださいね。(月刊ダイバー2015年10月号掲載)

【耳のスクイズ】

—耳のトラブルはスクイズが原因でしょうか?
山見 
「スクイズ」は、体の中の空洞やマスク内の空間が圧縮された状態のことです。潜降中、水圧がかかると発生します。耳はもっとも気圧に影響されやすい器管です。
よく見られるのは中耳腔スクイズです。耳栓やフードによって外耳道(耳の穴)が塞がると外耳道スクイズが発生することもあります。

ー具体的には、どんな症状が?
山見 
初めは圧迫感ですが、ひどくなると痛みが現れ、さらに悪化すると鼓膜が破れます。中耳腔スクイズでは体液が中耳腔に染み出すこともあります。

耳栓をするとスクイズになる?

ー耳栓でもスクイズが起こりますか?
山見 
耳栓で外耳道が完全に塞がるとスクイズを起こすことがあります。水圧で耳栓が奥に押し込まれ、取りづらくなることもありますし、押し込まれた耳栓が、浮上の際、外に出て行かないと、外耳道内の空気が膨張して鼓膜が破れることもあります。

ー水泳用の耳栓もダメですか?
山見 
これまでの実験では、水泳用の耳栓を着けて300本以上ダイビングしても鼓膜が破れる兆候は1例もありませんでした。市販されている水泳用の耳栓では、外耳道が完全に塞がれることはなかなか起こらないようです。通気口が開いている水泳用の耳栓もありますが、メーカーはダイビングにおける安全性を保証していません。

ーダイビング用の耳栓もありますね?
山見 
ダイビング用には、空気を溜める小さな袋が付いていて、潜降すると空気が外耳道に送り込まれ、スクイズが起こらない仕組みになっています。使い勝手がいいという方もいますが、鼓膜の圧迫感がわかりづらいと言われる方もいます。

フードが原因で外耳道スクイズ?

ーフードはスクイズに関係しますか?
山見 
潜降中、フードが完全に耳を覆うと外耳道スクイズが見られることがあります。スクイズを起こしそうなときは、フードに海水を入れると解消できます。

ーフードは耳抜きに影響しますか?
山見 
抜けやすくなるダイバーと抜けにくくなるダイバーがいます。抜けやすくなるのは、主に血管運動性鼻炎(温度差アレルギー)のある方です。血管運動性鼻炎の方は頭が冷えると耳管がむくみ耳が抜けづらくなることがあります。寒い時期にフードを着けると、耳管のむくみを予防することができます。

ー耳の抜けが悪くなるダイバーは?
山見 
一般には、フードが耳に密着すると耳抜き圧(鼻腔から中耳腔に送り込む空気圧)が上がります。
フードによる圧迫が耳管を通りづらくさせるためです。抜けづらいときはフードを緩めると改善することがあります。また、首のシールがきついと、耳管周囲がうっ血するため抜けづらくなることがあります。

【「浮き耳」って?】

ー「浮き耳」というのは?
山見 
「中耳腔リバースブロック」のことです。浮上のとき、中耳腔の空気が鼻腔に排出されない状態をいいます。

ーどんなときに起きるのでしょう?
山見 
耳が抜けづらいとき、何度も無理な耳抜きをすると発生しやすくなります。スクイズを起こしている時間が長いことも誘因になります。鼻腔に高い圧力をかけて耳抜きをしたり、長時間スクイズが続くと耳管がむくむからです。浮き耳起こさないためには、こまめに優しい耳抜きをすることが大切です。

ー前兆はありますか?
山見 
浮上中、ポコッ、ポコッと音を立てながら中耳腔の空気が排出されるときは、浮上速度が速いか、耳管の通りが悪くなっているときです。リバースブロックが発生する前兆かもしれませんから、浮上速度を落とす必要があります。

ーどんな症状が見られますか?
山見 
中耳腔リバースブロックが発生すると、中耳腔の空気が膨張し鼓膜や内耳が圧迫されます。軽いときは耳に圧迫感を感じるだけですが、ひどくなると痛みに変わります。
リバースブロックが急に起こると、内耳が刺激されてめまいが見られることもあります。リバースブロックが解消されないままダイビングを終えると、耳の閉塞感が続き、聞こえづらく感じることもあります。

浮き耳を治すには?

ー痛くて浮上できないこともあると聞きますが。
山見 
耳管が完全にロックされると耳が痛くて浮上できなくなります。リバースブロックが発生するのは、通常、水深3〜6mあたりですから、痛みが消える深度までいったん潜降して、できるだけゆっくり浮上しましょう。

ー減圧症の心配はないのですか?
山見 
水深6mより浅い深度であれば、長時間滞在しても減圧症のリスクはあまり増加しません。長めの安全停止をするつもりで浮上しましょう。
痛みを我慢して浮上すると、ギューと音を立てて空気が排出されることもありますが、鼓膜が破れてめまいが見られることもあります。

ーリバースブロックを解消するには?
山見 
空気を排出する方法をいくつか試します。のどを動かす、唾を飲む、鼻をつまんで唾を飲む(トインビー法)、鼻をすするなどです。これらの方法を試してもうまくいかなければ、同行者に予備のタンク(レギュレーター・BC付き)を持ってきてもらいます。
私の経験上もっとも有効な手段は、水中で血管収縮薬(耳管の充血を取る薬※)を飲むことです。

※血管収縮薬=耳管の充血を取る薬で、エフェドリン塩酸塩(エフェドリン)がもっとも効果があります。薬は防水して水中に持参、飲みやすいように片手で容易につぶせるペットボトルの水もいっしょに用意します。
 エフェドリンを含む薬剤は、海外ではドラッグストアなどで販売されており、耳抜き薬として使われていた時代もありましたが、耳や副鼻腔が抜けないダイバーが服用して、薬が症状を抑えきれなくなりリバースブロックを起こす例が度々発生しました。そのため、ダイビング前に耳抜き薬として予防投与することが禁止されました。

【ダイビング後の耳閉塞感】

ーダイビング後、聞こえが悪くなったり、耳が詰まった感じがすることがあります。
山見 
「耳の閉塞感」ですね。ダイビングでは、
❶外耳道(耳の穴)に水が入ったままになっている(図1①)、
❷中耳腔リバースブロックが続いている
❸中耳腔に水が溜まっている(図1②)
❹耳管が腫れている
こんなときに見られます。
いずれも違った部位に発生するトラブルですが、耳に閉塞感が現れます。


【図1】耳の内部と外リンパ漏
内耳窓には卵円窓と正円窓がある。卵円窓または正円窓が破れて、内耳の
外リンパ液が中耳腔(矢印の方向)に漏れた病気を、「外リンパ漏」という

耳から水が抜けない

ー「外耳道に水が溜まっている状態」はどうすればわかりますか?
山見 
頭を軽くトントンとたたくと、ビーンビーンと音が響きます。

ー頭を傾けて飛んでも抜けないことがありますよね。
山見 
外耳道は少し山のようになっています(図1③)。溜まった水が山を越すような姿勢まで耳を傾けないと水は排出されません。
外耳道を傷つけることがあるため、強くおすすめすることはできませんが、こよりを耳の穴に入れて水を吸わせることはできます。
外耳道にドライヤーを当てて乾燥させる方法もありますが、半日も経てば渇くので放っておいても構いません。

ー外耳道に水が入ると中耳炎になりませんか?
山見 
外耳道と中耳腔は鼓膜で仕切られているため、外耳道の水は中耳腔には入りません。鼓膜が破れていない限り、中耳炎の原因にはなりません。

ー「リバースブロックが続いている状態」というのは?
山見 
海面まで浮上しても、中耳腔の空気が十分排出されていないことがあります。中耳腔の圧力が高いと鼓膜が内側から圧迫され、緊張した状態になるため、聞こえづらくなり耳がつまった感じがします。

ー解消方法は?
山見 
普通は特に治療することなく自然に改善します。

ー「中耳腔に水が溜まる」というのは?
山見 
中耳腔スクイズが長く続くと、体液が中耳腔に漏れ出しますが、普通は1週間以内に自然に治ります。

無理な耳抜きはタブー

ー「耳管の腫れ」はどういうときに起こりますか?
山見 
無理な耳抜きを何度もすると耳管がむくみます。風邪やアレルギー性鼻炎があると特にむくみやすくなります。耳抜きをするとき、キュ〜と高い音が聞こえたら耳管が腫れている警告と思いましょう。

ーダイビングをした翌朝、耳の閉塞感が見られる方がいますね。
山見 
無理な耳抜きを何度も行うと、翌朝、耳の閉塞感が見られることがあります。ダイビング中、中耳腔スクイズを頻繁に起こしていると発生率が上がります。

ー無理な耳抜きをするとどうして閉塞感が現れるのでしょう?
山見 
高い鼻腔圧をかけて耳抜きをすると耳管がむくみ、唾を飲んでも空気が中耳腔に入らなくなります。
一方、中耳腔の空気は常に体内に吸収され続けています。夜間、唾を飲んでも中耳腔に空気が入らなければ、翌朝、耳閉塞感が発生します。
ダイビング後の耳閉塞感は、普通、数日以内に治りますが、無理な耳抜きを繰り返していると耳管が元に戻らず耳管狭窄症になることがあります。

コラムニスト

山見 信夫(やまみ・のぶお)先生
医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。宮崎医科大学附属病院小児科、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教授(医学部附属病院高気圧治療部併任)等を経て現職。学生時代にダイビングを始めインストラクターの資格を持つ。レジャーダイバーの減圧症治療にも詳しい。

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*サイト内では、メールによる健康相談も受けている(一部有料)

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