来たれ!冬を呼ぶ「鰤起し」

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コラムニスト:須原水紀
vol5 来たれ!冬を呼ぶ「鰤起し」


昼時の海藻の森

石川県・能登島の海は、夏29℃、冬は5℃と寒暖の差があるため、海の四季をはっきりと感じることができます。その季節ごとの変化を如実に表してくれるのが海の植物である海藻や海草です。
そして、海と人が共に暮らす「里海」という理想郷が存在する能登島の海中には、海藻の森が広がっています。海藻で見る四季の移り変わり、変化する海中環境、それに合わせて繰り返される生態行動など、ひとつひとつの海藻にまつわるストーリーを、能登島の海藻に魅せられたガイド・須原水紀さんが美しい写真とともに紹介します。

秋晴れの穏やかな季節に終わりを告げ、いよいよ能登の海に厳しい冬が近付いてきた。寒々しい風に野山のススキを吹きさらされ、木々がゆっさゆっさと揺らされ始めた。11月中旬から12月の北陸地方ならではの気象。空を割らんばかりの雷が窓をバリバリと響かせ、叩き付けるあられがあっという間に地面を真っ白に覆う。こんな日の能登島には人っ子一人と見当たらない。みな、屋内で身を寄せ合い耐えているのだろうか。しかしながら、ここぞとばかり奮起している人がいる。漁師である。この北陸の荒天こそが、冬の味覚「寒ぶり」の到来を告げるのだ。これを「鰤起し」と呼び、いよいよ市場が活気づく。荒れ狂う波とうねりで、海の中は一気に冬へと変わり、揚げた網には冬の顔ぶれが揃うそう。定置網漁師にとって冬は一番の稼ぎ時。この時を待って準備をしてきた。網を起こし(入れ替える)冬に備える。こういう時期は我々にも仕事が回ってくる。網の点検に漁船の救済やメンテナンス。水中に潜ってこそできる仕事は意外に多い。厳しい冬の海で共に生計を立てるのは同じ。互いに協力し合う里海の暮らし。


定置網に向かうブリ

さて、こんな季節なだけに、悲しいかな来客もお預けのような日々で、ここぞとばかりに好き勝手に気ままなダイビングを楽しむ毎日。すると今まで巡り会わなかったシチュエーションに出会う。特に時間帯を不規則にして潜ってみると、それぞれの太陽の傾きがドラマティックな効果を発揮する。昼時の上から刺す光は、今こそ伸びようとする冬のホンダワラの勢いを見せてくれるし、夕暮れの時の斜めから入る光は、草原に陰影を生みだしとても美しい。


夕暮れの斜光


夕暮れの草原

こうして秋と冬を切り替える嵐の合間に太陽の傾きを楽しんでいるうちに、漁師にとっても我々にとっても待ち遠しい冬がやってくる。能登の冬の海では、水面にまで達しそうな海藻の森はまるでジャイアントケルプの森。そこにはダンゴウオやホテイウオが待っている。しびれる程に冷たい海こそ、出会う生き物や風景に感動がある。

コラムニスト

須原 水紀(すはら・みずき)さん
生まれ故郷である能登のダイビングサービス<能登島ダイビングリゾート>でガイドとして勤務。海藻への愛と情熱はピカイチ。また、マクロ生物も大好きで、海藻に付くマクロ生物を探し出す眼は「顕微鏡の眼力」といわれるほど。

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