平安・鎌倉時代の国際貿易港 小値賀島前方湾

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コラムニスト:山本 遊児 × 塚原 博
其の七 平安・鎌倉時代の国際貿易港 小値賀島前方湾


【中国陶磁器】
12世紀中~後半代の中国青磁碗。外底部に墨書が認められる、輸送途次の中国陶磁器としては初出の資料である。

陸の遺跡とは違いまだまだ手付かずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。
第7回目は五島列島の北端に位置する小値賀島・前方湾。
五島列島沖は、古代よりアジアと日本を結ぶ海路となっていた。そしてこのたび前方湾から土器や陶磁器が大量に発見されたことで、ある歴史が浮かび上がってきた。

前方湾は、東シナ海の西端をなす五島列島の北端に展開する小値賀諸島の主島、小値賀島の東部に位置する天然の良港である。五島列島の西沖には黒潮の分流、対馬暖流が北上しており、その反転流と季節風を利用した南北を結ぶ海路によって、朝鮮半島と九州の北岸および西岸との間では、縄文時代以来、文物の流通と往来が頻繁であったことが知られている。
また、8世紀前葉には遣唐使船団の派遣や中国商船団の来航によって東シナ海を東西に横断する海路が確立され、この海域沿岸はアジア世界と日本を結ぶ彼我往還の要衝となった。古事記および肥前国風土記によれば、五島列島は古称を「ちかしま」といい、構成する群島は南部の「おおちか」と北部の「おぢか」に勢力区分されていたことを伝えるが、五島列島唯一の古墳の存在や各時代の遺跡調査から、小値賀島が古代から中世にかけて「おぢか島」の中心島であったことが明らかである。


【海底発掘の状況】
海底の発掘調査は土砂をパイプで吸引して除去するが、陸上調査に比較して作業時間が短いなど、さまざまな難点がある。

筆者は平成13(2001)年の山見沖海底遺跡の調査以来、小値賀島周辺海域の海底に所在する遺跡の探索と調査に関わってきた。残存する文化遺産の研究領域を、陸上から海底に拡大したものである。
水底という特殊環境の中ではあるが、基本的な調査方法は陸上での遺跡調査と同じく、考古学的手法によってなされる。その結果、前方湾海底に平安時代中期後半の11世紀後半~12世紀前半代から、鎌倉時代末の13世紀後半~14世紀前半代までの、中国や日本の土器・陶磁器を主体とする大量の歴史的遺物の存在が確認されたことで、前方湾がおおよそ200年間の長期にわたって国際貿易の舞台であったことが推定されるに至った。


【国際的調査団】
調査には欧州やアジアの、外国人研究者の参加も多くあった。
写真の人物はイタリア人考古学者で、中国陶器壺確認の場面である。

江戸時代に平戸藩主であった平戸松浦氏の祖はかつて小値賀島を拠点としたが、1225年に本拠地を平戸島に移転したと伝えている。まさに前方湾で国際貿易が展開された時代のことである。なお、現在前方湾内は周知の遺跡として保護されており、湾内海底からこれらの遺物を採集することは法律で禁じられている。


【刃痕のある獣骨】
回収した遺物にはイノシシの骨もある。解体に伴う刃物傷が残るものがあり、来歴が興味深い。

【小値賀町歴史民俗資料館】

小値賀島の周辺海域海底から回収した遺物や、町内の古社に伝世された平安・鎌倉・室町時代に中国や東南アジアから招来された陶磁器や金属製品などが常設展示されている。
場所=長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷字木ノ下1931
電話=0959-56-4155

考古学3つの原則

「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」 考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、月刊ダイバー編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp

コラムニスト

写真=山本 遊児 (やまもと・ゆうじ)さん

水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員

>>this is the link with your pubblication...under your Picture: http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr
>>月刊ダイバーで連載中


文・解説=塚原 博 (つかはら・ひろし)さん

長崎県小値賀町教育委員会・歴史民俗資料館前学芸員、日本考古学協会会員、長崎県立大学非常勤講師、NPO法人アジア水中考古学研究所理事

ほし店長