根府川沖海底遺跡 海底に残された震災の記憶

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コラムニスト:山本 遊児 × 林原 利明
其の十三 根府川沖海底遺跡 海底に残された震災の記憶


【砂に埋もれる残骸】
プラットホームの残骸だろうか。このような残骸が海底のいたるところにみられる

陸の遺跡とは違いまだ手つかずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。
そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。
第13回目は神奈川県小田原市、根府川沖。
根府川沖には今から91年前に発生した大正関東地震がきっかけで海に沈んだプラットホームがある。この水中の遺物は、震災がもたらした被害の凄まじさを知るための貴重な手がかりとなる。

根府川(神奈川県小田原市)沖に、プラットホーム(以下ホーム)が沈んでいるダイビングポイントがある。
今から91年前の1923(大正12)年9月1日(土)に発生した大正関東地震は南関東地方及び周辺地域に甚大な被害をもたらした。根府川周辺でも大規模な地滑り・土石流が発生し、海を眼下に見る標高約50mの崖中腹にあった東海道本線・旧根府川駅のホームが海底へ流された。ホームや駅舎とともに、地震発生時にちょうどホームに入ってきた列車(蒸気機関車と客車)及び集落も流されており、多くの死者・負傷者・行方不明者も出ている。機関車は1934(昭和9)年に引揚げられたが、その他の痕跡は、残骸としてそのまま海底に残されている。


【石積み】
ホーム土台の石積みだろうか。列を成して残されている

ホームやその他の残骸は、水深10〜15mほどの砂地上に散在している。大形の金属部材も見ることができる。この海域で行われたマルチビーム探査(音波による海底地形の測量)で作成された海底地形図によると、残骸は広範囲に見られ、被害の大きさがわかる。ダイビングポイントとなっている地区は、その一部のようだ。


【金属部材】
駅あるいは機関車に使われていたものだろうか。プラットホームそのものの他に、海底には金属部材も残されている

ホームは大小に割れて横転し、金属部材はその大部分が砂に埋もれ、しかも表面には海藻などが多く付着しているために、周囲の風景と同化している状態だ。意識して見なければわからないかもしれないが、注意深く見ると、ホームの土台としての石組みや段差、円形やレール状の金属部材、そして屋根瓦なども確認できる。


【ホーム】
海底にはホームの残骸と考えられる大きなコンクリートの塊が複数みられる

この地区は、地震による災害の痕跡が目に見える状態で残された水中文化遺産である。しかし、これまでに災害や地震についての調査はなされているものの、考古学的な調査が行われたことはない。このため、残骸(遺物・遺構)にどのようなモノがあるのか、どこに、どのようにあるのか、などという詳細情報は把握されておらず、遺跡としての十分な歴史的評価も受けていない。甚大な被害をもたらした震災の記憶を後世に正しく伝えるためにも、考古学的な調査は不可欠である。


【地上に残る石積み】
今は使われていない根府川駅旧1番線ホーム土台の石積み。海底に残されているものと類似する

考古学3つの原則

「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」 考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、月刊ダイバー編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp

コラムニスト

写真=山本 遊児 (やまもと・ゆうじ)さん

水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員

>>this is the link with your pubblication...under your Picture: http://membership9.wix.com/iriae#!yamamoto-biografia/cddr
>>月刊ダイバーで連載中


文・解説=林原 利明 (はやしばら・としあき)さん

アジア水中考古学研究所理事、玉川文化財研究所主任研究員、東洋大学大学院修士課程修了、日本考古学協会員

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