真っ暗闇のナイトダイビング ライトを振り回して急浮上

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アドバイザー:我妻 亨
vol.1 真っ暗闇のナイトダイビング ライトを振り回して急浮上

危機からの脱出第1回メインイメージ

月刊ダイバーの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。更新は、毎月奇数週(第1・3・5週)の火曜日!
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。
第1回目は、半年以上のブランクがあったダイバーがナイトダイビングで単独浮上してしまったケースです。

真っ暗闇のナイトダイビング、ライトを振り回して急浮上

ダイビング歴2年目のHさん(30本/女性)

久しぶりにナイトダイビングをしたものの、気づくと皆の明かりがじょじょに遠のき、どうにも対処できないまま1人で単独浮上してしまった経験を紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
ダイバーになったのは2年前。水泳が苦手だった私ですが、「ダイビングは泳げなくてもできるよ」と言われ、Cカードを取ることに。その時担当してくれたインストラクターがとても親切だったので、講習も無事に終え、勢いで引き続きアドバンス講習も受けることにしました。
講習後は、3回ほどショップツアーに参加したものの、ドライスーツには抵抗があったため、水温が低くなると同時に海から遠ざかりました。そのため半年以上も潜らないブランクダイバーとなってしまいました。そうして冬眠時期を越した昨年の初夏、そろそろ水温も上がり海に潜りたくなった私は、友人3人といっしょに1泊2日の西伊豆ツアーに参加することにしました。

言い出せないままナイトダイビングへ

そのツアーはナイトダイビングを含め、2日間で5ダイブを予定していました。5人のお客さんのうち、私以外の4人は冬場も定期的に潜っており、私1人がブランクダイバーというグループ構成。友人2人を含め、皆はナイトダイビングをとても楽しみにこのツアーに参加している様子でした。しかし、私は内心、不安でいっぱい。ただでさえ忘れていることのほうが多く、日中のダイビングをするだけでも精一杯なのに、真っ暗闇のダイビングなんて……。ナイトは1年前のアドバンス講習で潜ったきりで、その時も、暗闇に対する恐怖感が強かったので「できればパスしたいな〜」と思っていたのが本音です。しかし1人だけパスするのも恥ずかしく、昼間の2ダイブでなんとか感覚を戻しながら、ナイトもがんばってみることにしたのです。
空が薄暗くなって来る頃、器材を背負った私たちは、いざポイントへとボートで向かいました。不安が渦巻いていた私はボートに乗り込むだいぶ前からライトを煌々と照らし、自分を落ち着かせようと必死だったように思います。そんな私の様子を見て心配したインストラクターが「水中はみんなでライトを照らしながら進むので、意外と明るく感じられると思いますよ!」と。しかし恐怖心を払拭できないうちに、ボートがポイントへと到着。順番にエントリーして潜降ブイへと泳ぎます。
水底を見るとそこに広がるのは真っ暗闇。恐怖を必死で抑えつつ、両手でロープにしがみつきながら潜降します。10m程度の水底に着いたところでインストラクターがライトでOKサインを照らします。私もOKサインを返すと、合図とともに皆が進み始めますが、私はなかなかロープを離せないまま、気づくといちばん後ろになっていました。

海底に何かいる?BC給気でプラス浮力

インストラクターの助言もむなしく、水中はやはり「暗くて怖い」という印象。前を泳ぐバディの黒いフィンを照らしながら必死で泳ぎます。もちろん中性浮力が取れるわけもなく、水深10m前後の岩場すれすれに進むしかできません。ひざが何度も海底にゴツゴツと当たり「何かいたら刺される!」とビクビクしていました。
20分ほどがたった頃、昼間にインストラクターが沈みぎみの私のBCに空気を入れてくれたことをふと思い出しました。そして今度は自分でプーッと給気してみると、身体が上昇するような感覚がありました。少しホッとした気持ちで周りを見回してみると、他の人たちの光が少しずつ遠のいていくように見えます。さらに身体が上昇する感覚がまだハッキリとしています。「え? なんで、なんで?」1人だけどんどん離れていく視界を疑いつつ、その時は自分が離れていく理由も対処法も判断できず、ただ暗闇にのまれていく中でどうしていいのかわかりません。「待って。誰か助けて〜!」聞こえないはずでも誰かに気づいてほしい一心で、レギュレーターをくわえたまま「キャー」と叫びだした私。上下左右もわからず、なすすべを失い、あっという間に錯乱状態に。今思えば、BCにエアを入れすぎてしまったのでしょう。しかし、その時の私にはその判断もできず、当てもなくライトを振り回し、声にならない声で叫んでいました。

早く水面に出たい!叫びながら単独浮上

どのくらいのスピードで浮上していたのかはわかりませんが、浮上速度に気を配れるはずもなく、気づくとライトの光が水面に反射するのが見えました。「あっ、もう水面だ」と思った瞬間、早く水面に顔を出したい衝動で必死にフィンキック。そして水面寸前まで来たその時、誰かが後ろから私を抱きかかえ、顔を出すと同時にBCにエアを入れ、「だいじょうぶですよ!」と声をかけてくれました。インストラクターでした。私は苦しさからか咳き込み続け、息もゼイゼイ。でも「生きているだけよかった」と思いながら、近づいてきたボートに無事にエグジットしました。インストラクターは残りの皆が待つ水底に迎えに行き、5人揃ってエグジット、港に戻りました。
実際に浮上し始めた地点は水深8m程度。浮上後の減圧症の疑いも見られませんでしたが、インストラクターは「もっと早く気づいてあげられたら」と言ってくれました。しかしリスクの高いナイトダイビングに、スキルも未熟なまま参加した私にも責任はあるはずです。勇気を持って辞退していれば迷惑もかけず、あんな怖い思いをすることもなく済んだのに……、と深く反省しています。

PADIコースディレクターからのコメント

半年以上のブランクなら復習コースでリフレッシュしてから

ダイビングをパスするのは、なにも恥ずかしいことではありません。不安感や恐怖感があるのなら、潜る前にしっかりと担当のガイドやインストラクターに伝えて解決しましょう。水中で不安感が募ったら、まずは深呼吸を。吐くほうを意識して、ゆっくりと呼吸してみてください。水中でインストラクターにOKサインを返していますが、不安感が強ければその時点で「何かおかしい」という合図を遠慮なく送ってください。極限まで我慢し続けてパニックになる前に、不安のタネは消していきましょう。
今回のトラブルは、ブランクがあったことに起因しています。冬のシーズンを休んでいたため、ダイビングのスキルを忘れてしまっていたのです。半年以上のブランクがあったら、復習コースへの参加をオススメします。知識の確認とともに、水中での感覚も思い出しましょう。水中で身体が浮きぎみになったら、BCの空気を抜いて、息を吐くこと。ナイトという特殊な環境下でのダイビングですが、基本は同じです。

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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