透明度1mの春濁り 洞窟内でガイドを見失った!

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アドバイザー:我妻 亨
vol.4 透明度1mの春濁り 洞窟内でガイドを見失った!

危機からの脱出第4回メインイメージ

月刊ダイバーの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。更新は、毎月奇数週(第1・3・5週)の火曜日!
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。
第4回目は、透明度の悪い洞窟内で迷子になり、エア切れ寸前になったケースです。

透明度1mの春濁り 洞窟内でガイドを見失った!

ダイビング歴4年目のNさん(40本/男性)

透明度の悪い海況で入り組んだ洞窟内を進んでいたところで、仲間3人と迷子に。出口もわからずさまよったあげく、エア切れ寸前になった体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
沖縄でCカードを取得してから4年目の僕は、スローペースで潜ってきたので、経験本数はまだ40本程度。エアの消費も激しく、中性浮力もままならず、4年目とはいえ初心者ダイバーです。
そんな僕が今年の4月、インストラクター資格を持つ友人Yさんを含む仲間といっしょに、伊豆へ潜りに行ったときのことです。引率してくれるYさんは、ショップで働いているわけではないのですが、インストラクターの資格を持ち、頻繁に伊豆に通っているベテランダイバー。時々、僕たちを連れてガイドもしてくれる頼もしい存在です。
その日は、僕を含めた仲間3人をイチ押しの洞窟ポイントに連れて行ってくれるとのことでした。ただ、「この時期の伊豆は透明度が悪いんだよな〜」と漏らすYさん。半年ぶりのダイビングで緊張していた僕は、その言葉を聞いて不安が募りました。

リタイアしたい気持ちを言い出せず緑色の海へ

到着後、さっそく海況を確認すると、なんとその日の透明度は1m前後とのこと。Yさんは苦笑いしていましたが、僕は内心「こんな時に潜らなくても……」と、リタイアしたい気持ちでいっぱいでした。ただでさえスキルに不安を抱えているのに、最悪の透明度での洞窟ダイビングです。「こんな状況で迷ったりしたら終わりだよな」そんな恐怖が僕を襲います。しかし、他の2人は平気な顔をしているのに、自分だけリタイアする勇気もなく、結局何も言い出せないまま、皆といっしょに準備を始めました。Yさんは「透明度は悪いけど生物はいっぱい出てるみたい!」と言いながら、洞窟内で、はぐれないよう僕たちに注意を促します。「絶対にYさんのフィンを見失わないように付いて行こう!」そう自分に言い聞かせます。 ボートがポイントに到着し、いざエントリーした水中は、想像以上に緑色の世界です。水面からは自分のフィン先さえ見えません。恐怖心をかき消しながら、僕たちはロープ沿いに潜降していきました。水底に着き、4人で密着していても相手がかすかに見える程度。僕はYさんの真後ろにピッタリと陣取り、フィン先をライトで照らしながら泳ぎ始めます。しかし黒いフィンのため、一瞬でも目を離すと見失いそうなほどの視界でした。

ガイド役Yさんのフィン先を追いかけ恐る恐る洞窟内へ

間もなく、洞窟の入り口から中へと進むYさん。必死で付いて行くものの、洞窟の中では余計に黒いフィンが見えづらく、はぐれそうな恐怖が僕を襲います。そんな心境でしばらく進み、ふと後ろを振り返ると、2つの光がこちらを照らしているのが見え、ほっと安心した気持ちで前を向き直しました。すると、その振り返った一瞬の間に、僕はYさんの姿を見失ってしまったのです。
「ヤバイ! Yさんがいない!」僕は急上昇する心拍数をはっきりと感じながら、狭い洞窟の中を縦横無尽にライトを照らして探します。「黒いフィン……銀色のタンク……どこだ?」僕は、進んでいけばYさんに会えるはず、と手探り状態で進んでみるのですが、その姿はどこにも見当たりません。
ふと、後ろを振り返ると、残りの2人は僕の後を付いてきてくれており、すぐにYさんがいない状況をジェスチャーで伝えました。彼らも驚いて動揺した様子で、僕以外の2人が持っていた水中スレートで「Yさんとはぐれた?」「はぐれた どうしよう」といった会話を交わしながらも、3人ともパニック寸前。とても冷静な判断ができる心境ではありません。洞窟には出口がいくつかあるとは聞いていましたが、それがどこにあるのかなんてわかるわけがない。しかし僕たちは、とりあえずもう少し進んでみることにしました。

真っ暗闇でロスト 出口の前で3人の残圧はわずか

泳ぐ、というより、見えている壁伝いに進むのみ。そしてその先に出口があることをただただ祈るのみ。まさに極限の心理状況だった僕たち。どのくらい進んだかわからないのですが、うっすらと光が見え、僕たちはその光に向かって猛ダッシュします。そこは幸い、洞窟の出口。「洞窟から脱出できた!」3人で喜びをわかち合ったのも束の間、これからどうしたらいいのか……。スレートで「Yさん、中で探してるかな」という会話の後、しばらく出口の前でYさんを待ってみることに。そしてふと残圧を見ると、なんと10を切っているではありませんか! 慌てて自分の残圧計を見せ、残りの2人の残圧も確認してみると、50と30。Yさんをこのまま待っていたらエア切れは確実! と思った瞬間、後ろから僕たちの背中をたたく人影が……Yさんでした! レギュ越しに歓喜の声を上げながら、奇跡のような再会を果たした僕たちは、その場ですぐに浮上。無事に全員でエグジットすることができたのでした。
エグジット後は、Yさんが「気づくのが遅かった」と何度も謝罪してくれました。一度、中を探しに戻ってくれたようですが見当たらず、違う出口のほうかもしれない、と外から回りながら別の出口に行ったところで僕たちの影を見つけたそうです。あんな状況で、どうするのが正しかったのだろう、と悩むところですが、全員が無事だっただけでほんとうによかったと思っています。

PADIコースディレクターからのコメント

状況に応じた器材を携行し、合図や使用法を事前に確認すること

スキルに不安がある状態で、透明度1mの洞窟ダイビングを行ったことは無謀です。
透明度の悪い春濁りの時期のダイビングは、相応の器材が必要です。まず用意するものは可能な限り強力なライトで、できればワイドではなくスポットのものを用意します。また、ガイドはストロボライトなど目印になるものを使うことが通常です。透明度の悪いときの洞窟ダイビングなら、エントリー前にライトの使用法や目印としての使い方を確認しておくべきです。可能ならラインを使うのも手です。また、かならずはぐれた場合の集合場所の目印や手法も打ち合わせしておきましょう。
それでもはぐれてしまった場合ですが、まずは慌てないこと。はぐれたと思ったらそれ以上は前に進まず、すべての行動をストップします。そして、バディやグループ全体でまとまり、落ち着いて来た方向を考え移動します。透明度の悪い水中ですから、いきなりダッシュしたりはせず、少しずつ動くようにしてください。

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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