身体が締めつけられる!水深20mからとっさの急浮上

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アドバイザー:我妻 亨
vol.5 身体が締めつけられる!水深20mからとっさの急浮上

危機からの脱出第5回メインイメージ

月刊ダイバーの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。更新は、毎月奇数週(第1・3・5週)の火曜日!
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。
第5回目は、初めてのドライスーツダイビングでパニックになり、急浮上しようとしたケースです。

身体が締めつけられる! 水深20mからとっさの急浮上

ダイビング歴1年のMさん(20本/女性)

初めてのドライスーツダイビングで、想像以上の寒さやスーツの密着感などから理性を失い、水中でパニックになり、錯乱したまま急浮上しようとした体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
私は友人Rさんの誘いで昨年7月に伊豆でCカードを取得しました。8月にアドバンスも取得し、ショップツアーにも2回ほど参加したのですが、10月に潜った際、あまりにも寒くて、水中を楽しむどころではなく、そのまま海から遠ざかってしまいました。
そうして半年ほどが過ぎた今年の3月、Rさんといっしょに久しぶりにショップに遊びに行きました。そこで、海の写真を見せてもらった私たちは、とても愛くるしい、とある生物の写真に一瞬で心を奪われてしまいました。それは「ダンゴウオ」という体長数センチほどの生物。今がちょうど見られる時期とのことで、「こんなかわいい生物なら、ぜひ見てみたい!」とテンションは一気に盛り上がりました。寒い海を毛嫌いしていた私たちは冬の伊豆を潜ってみたい衝動に駆られ、早速ドライスーツで出かけることにしました。

ブランク状態のままドライスーツに初挑戦

ダイビングは半年ぶりで、器材のセッティングから基本スキルなど、ほとんど忘れてしまっていた私たちは、一から思い出さなければいけない始末。インストラクターの助けを借りながらも、なんとか準備を進めます。さらに、ドライスーツ初挑戦です。インストラクターは丁寧に説明してくれるのですが、水中でやることや注意すること、覚えることが多すぎて、全部が頭に入ったかどうか不安なほど。ただ「とにかくドライスーツは吹き上げられると危険」というイメージが強く残り、それだけは気をつけようと思ったのでした。
その日は、東伊豆のビーチポイントでのダイビング。海況は穏やかで波もなく、久しぶりのダイビングには適した環境でした。準備を整え、スロープをゆっくりと進んでエントリー。水温は13度で、フードと冬用グローブを装着していましたが、顔に感じる水は想像以上に冷たく、緊張します。さらに水面移動中、前を泳ぐRさんを確認しようと頭を上げた時、首の前側から冷たい水が大量にスーツ内に入ってきてしまいました。「冷たい!」私は飛び上がるように身体を起こしました。レンタルスーツのためフィット感も緩く、少し動かしただけでも水没します。さまざまなマイナス要素が私の恐怖心をあおる中、ダンゴウオに会いたい気持ちで潜降を開始します。

大量の水が浸入し、震えが止まらない

左腕を上げて潜降しようとするもののいっこうに沈めず、無意識に手足はジタバタ。その間もどんどん首もとから水が浸入してくるのがわかります。なかなか沈めない私を助けにインストラクターが来てくれて、なんとか海底に到着。「OK?」と聞いてくる彼のスレートに「水がいっぱい入った 冷たい」と書きました。するとドライスーツに給気してくれ「寒さが耐えられなくなったら教えて」と指示をくれました。
私たちは水深7m前後の潜降地点から、水深20mあたりのダンゴウオがいるという根を目指しました。しかしその頃の私は、もはやダンゴウオのことなど忘れ、寒さと水没したスーツの違和感で「もう上がりたいな〜」という気持ちでいっぱい。焦る気持ちで深度計を何度も見ながら、10分くらいかけて水深20m地点まで進みました。そのうち私は寒さで身体が震え出してしまい、さらに進めば進むほどドライスーツがどんどん身体に張り付いてくる感覚。「なんなんだろう、このぎゅうぎゅうな感覚は……。寒くて身体の感覚がおかしくなっているのかな?」スクイズのことなど思い出すこともなく、いろいろな悪状況が私の判断力を鈍らせていきました。

圧迫感に襲われ錯乱状態で急浮上

そうして水深20mに到着したところで、インストラクターはお目当てのダンゴウオを探し始めます。しかし、私は寒さと震え、そしてスーツに締めつけられる感覚が恐ろしく感じられるようになっていました。
そんな中、突然「このままだと窒息死する!」という考えが私の脳裏をよぎり、次の瞬間、とっさに私は水面へと向かって泳ぎだしてしまいました。完全にパニック状態に陥った私は急浮上の危険も省みず、もがくように上に向かって必死で泳ぎ始めます。その様子を見つけたインストラクターがすぐに駆けつけてくれたのですが、捕まえられた瞬間、私は何を思ったか自分のレギュを外そうと片手をかけたのです。そこでインストラクターが私の手ごとレギュを押さえ、いっしょに浮上、私は無事に水面に戻ることができました。 水面に出た私はマスクとレギュを外し、寒さとドライスーツの密閉感を訴えながら、エグジット口に曳行されました。陸のスタッフにドライスーツを脱がせてもらい、温かいシャワーで身体を温め、なんとか生き返ったものの、身体のあちこちにアザが出来ていました。
後から検証してみた話だと、潜降後インストラクターに給気してもらったっきり、私は一度もドライスーツに給気していなかったため、激しいスクイズを起こし、水没などの悪条件が重なってパニックに陥ったようでした。

PADIコースディレクターからのコメント

初めてドライスーツで潜るときは、新しいスキルとしてトレーニングを

ドライスーツは、使い方をマスターすれば、水温の低い海も快適に潜れるスグレモノ。ただし、ウエットスーツとは違う操作方法をマスターしなければなりません。今回のトラブルの一番の原因は、ご自身でもわかっているとおり、ブランクダイバーだったこと。セッティングの段階からインストラクターの助けを借りなければならない状態では、新しいスキルとしてドライスーツを使いこなすことはとうていできません。
今回のケースは、おそらくレンタルスーツのサイズも合っていなかったのでしょう。しかし、浸水しやすい動作はきょくりょく控える、スクイズで痛くなる前にスーツに給気するなど、基本的なことがすべておざなりになっていたため、悪循環に陥っています。 初めてドライスーツで潜るときは、インストラクターといっしょに1つずつ、使い方をマスターしていきましょう。スペシャルティ講習を受けられるとベストです。

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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