エアが重くて渋い!? 150から動かない残圧計

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アドバイザー:我妻 亨
vol.6 エアが重くて渋い!? 150から動かない残圧計

危機からの脱出第6回メインイメージ

月刊ダイバーの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。更新は、毎月奇数週(第1・3・5週)の火曜日!
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。
第6回目は、レンタル器材に異変を感じパニックに陥ったケースです。

エアが重くて渋い!? 150から動かない残圧計

ダイビング歴2年のHさん(20本/男性)

初めてのサイパンにダイビング旅行に出かけ、現地ダイビングサービスで借りたレンタル器材で、残圧計の異変を感じながらも潜り続け、パニックになった恐怖体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
僕がダイビングを始めたのは2年前。長期休暇で訪れたハワイでCカードを取りました。以来、年に2回、海外リゾートでのダイビングを楽しんでいます。これまで潜った海は、グアム、セブなど近場の海外リゾートです。そして、昨年の夏、かねてから潜ってみたかったサイパンの「グロット」に潜りに行きました。
もっぱらリゾートダイバーなので、3点セットを持っているのみ。重器材は持っていませんでした。それはハワイで講習を受けた際、とあるダイバーに「海外に行くときは飛行機の預け荷物に重量制限もあるし、軽器材だけ持って行くほうが楽だよ」とススメられたのがきっかけです。その身軽さには僕も共感しており、毎回3点セットだけを持参しています。サイパンでも、BC、レギュレーター、スーツはレンタルをしました。
現地サービスでその日の予定を聞くと、念願の「グロット」は海況を見ながら午後に行くとのこと。1本目は「ラウラウビーチ」を潜ることになりました。スキルの不安はとくにないのですが、それでも最初に穏やかなポイントを潜るのはうれしい限りです。

1本目は穏やかなビーチダイビング

ポイントに到着し、自分でBC、レギュレーターをタンクにセットしました。残圧も200あることを確認し、呼吸のチェックも済ませ、準備万端です。
その日は僕を含めてゲストは4人。準備が整ったところで、器材を背負ってゆっくりとエントリーしていきます。水深も浅めで、ロープを伝いながら、なだらかな砂地をゆっくりと進みます。海底ではオヤビッチャたちの大歓迎を受けながら、3種類のクマノミを探して進んでいきました。
数十分がたったあたりで、ガイドが僕たちに残圧を聞いてきました。僕は自分のゲージをたぐり寄せ、残圧計を見てみると150。「ん? 150?」空気の減り具合はいつもそれほど多くはないのですが、他のダイバーはその時、100前後。「今日は僕だけやけに減ってないな〜」とは思いました。しかし深度計を見みると9m。時間は結構たっているようでしたが、浅いからエアも減らないのかもと思いました。ガイドもOKサインで問題ない様子です。僕はダイビングコンピュータを持っておらず、何分経過していたかもわかりません。でもガイドがちゃんと管理してくれているから大丈夫だろう、と安心し切っていました。

10分以上たっても残圧計の針は150を差したまま

全員の残圧を確認した後、サンゴの根の間をふたたび泳ぎ始め、オレンジフィンアネモネフィッシュ、かわいらしいハゼなどを見ていきました。
そうして10分以上が過ぎた頃、僕はふと、さっきの残圧が気になり、もう一度残圧計をチェックしてみました。すると、針は変わらず150を指しています。「え? これって?」明らかに何か異変を感じ、得体の知れない恐怖が僕の中を駆け巡りました。「もしかして残圧計の針、動いてない? 壊れてる?」急に頭の中が真っ白になり「ほんとうの残圧がわからないってこと?」と、凍りつくような気持ちになりました。すると、吸い込む空気が重く、渋くなるような気がしてきました。「これって、エア切れのサインじゃないのか?」残圧がゼロかもしれない……そう思った僕はガイドの側に駆け寄りました。「壊れている」という状況をどう伝えればいいかわからず、残圧計を指しながら必死で首を横に振り「残圧、違う」と表現するしかありませんでした。
しかし、そんなボディランゲージが伝わるわけもなく、訳がわからない様子のガイド。その顔を見て、「もう伝わらない!」と思った次の瞬間、水面に向かってフィンキックをし始め、緊急浮上の態勢を取っていました。

緊急浮上を止められガイドのオクトパスでエグジット口へ

その様子に慌てたガイドは僕を引き止め、オクトパスを差し出し「これをくわえて!」とすぐに合図をくれました。僕は奪い取るようにオクトパスをくわえ、深呼吸するようにとガイドから指示を受けます。そしてそのまま全員で、ゆっくりエグジット口へと戻っていきました。
エグジット後、事情を伝え、すぐに残圧計を調べてもらいました。タンクのバルブを締めても針は動きません。何かのはずみで壊れてしまったのだろうとのことでした。別のレギュレーターをセットして残圧をチェックしてみると、エアはまだ70ほど残っていました。故障に気づいたときに呼吸が重く感じたのは、気のせいだったようです。しかしこれも浅めだったからよかったものの、深いポイントだったら、と思うとほんとうに背筋がゾッとします。
その後、別のレギュレーターに交換してもらい、2本目で「グロット」を潜ることができたのですが、1本目の恐怖心が抜けずに残圧ばかりが気になり、堪能することはできませんでした。そうして帰国後、僕がすぐに自分の重器材を購入したのは言うまでもありません。

PADIコースディレクターからのコメント

バディシステムを順守していれば、不測の事態でも慌てなくなる

ゲージの針が動かないだけで、実際にはエア切れしていたわけではないのですから、不安感から慌ててしまったことがパニックの原因です。しかし、きちんとバディシステムを取っていれば、このような事態は防げたでしょう。バディの側にいて、いつでもバックアップのエアが使える状態にしておくこと。ただいっしょに潜るだけではなく、トラブル時にはサポートをしあうのがバディシステムです。今回の場合、水中ノートなどを持っていれば、ガイドさんとの意思疎通もできたと思います。
ご自身の体験から器材を購入されたというのも1つの予防ですが、その器材のメンテナンスを定期的に行っていなければ、同じことが起こることが考えられます。レンタル器材でもメンテナンスはされていると思いますが、器材をいろいろと使うダイビングですから、稀にこのようなことが起こることも頭に入れておきましょう。水中でいちばん避けるべきことは、慌ててしまうことです。

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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