石橋沖石丁場遺跡江戸城との密接な関連性

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コラムニスト:山本 遊児 × 三瓶 裕司
其の十八 石橋沖石丁場遺跡江戸城との密接な関連性


【海底に沈む石垣用材】
正面の下部には矢穴痕が見られる

陸の遺跡とは違いまだ手つかずのものが多い水中遺跡、遺物の数々。 そんな、水中に眠る日本各地の遺物を追う。
第18回目は神奈川県小田原市、石橋沖。
石橋沖には、海底に石材が点々と沈むエリアがある。
江戸幕府の始期、江戸城修築のため山から切り出された、石垣用材と考えられている。

今回紹介するのは、江戸城の石垣に関わる遺跡です。
小田原の市街地を望む西の山にある石垣山一夜城があります。この城は、豊臣秀吉が1590年に関東を統治する北条氏を22万の兵をもって攻めた際に築城したものです。この城が「一夜」で造られたかどうかは措いておきますが、この城を有名なものとしている理由の1つに、関東で初めて築城された「総石垣の城」であることが挙げられます。それまで関東にある城は土を盛って造った土塁という防御施設が中心で、石垣は低いものしかありませんでした。


【石垣用材】
こうした石材がある程度まとまった状態で分布している

それから14年後の1604年、前年に江戸幕府を開いた徳川家康は、全国の大名に命令して江戸城をより大きなものに修築させます。その際、壮大な石垣を構築することにして、その工事に西国の大名たちを当てました。動員された大名は、おそらく14年前に石垣山一夜城に参陣した大名から「伊豆には石垣に適した石が取れる」と聞き及んだのでしょう、箱根から伊豆半島にかけての地域に殺到します。当時の記録には、その数は66の大名家に及び、彼らは競い合って江戸城の石垣用材を切り出したと記されています。また切り出した石垣用材は、「石曳道」と呼ばれる専用道路を伝って海辺まで引き下ろされ、浜から「石舟」に載せられ海路江戸へ運ばれていたという記録も残っています。


【海岸に点在する矢穴石】
江戸時代以降、沢山の石材が切り出されていることが観察される

さて、ここ石橋地区や周辺の山中にはそうした石を切り出した「石丁場」遺跡が見つかり、2か所の遺跡で発掘調査を行いました。そして発掘調査に伴って、発掘調査範囲の周辺全域での分布調査や、地元のかたがたへの聞き取り調査を重ね、これまでに石を掘り出した採掘坑や石を切り出した加工場、完成した石垣用材を山から引き下ろすまでの間、1か所に集積した仮置き場など多くの遺跡が見つかりました。 海岸での調査では、石垣用材が点在している様子や周辺地形の環境から、この石橋海岸から石を積んだ船が出港していることが予想されました。
そこで思ってしまいます。「海底の様子を見てみたい」と。


【矢穴痕】
矢穴技法の痕跡が観察される

そんなきっかけでダイビングの世界に入ることにもなったわけですが、これまでさまざまな機関や人々の協力をいただいて海底の調査を実施しました。地元の「石橋ダイビングセンター」とは現在も調査を継続しており、これまでに海底に沈む石垣用材の分布に偏りが認められることがわかってきました。この分布状況はおそらく船に積み込む際に誤って落としてしまったもので、石が集中する辺りに船へ積み込みをした施設があったものと考えています。 こうした成果を受け、同センターでは「PADI 石橋Stonepit SP」というスペシャルティーダイバーコースを設定して、参加ダイバーとともに陸上や海底の石丁場遺跡をめぐり、石丁場遺跡と江戸城の関係などを考える試みを行っています。興味あるダイバーはぜひ訪れてみてください。石丁場遺跡を海の中から体感してもらえればと思います。

考古学3つの原則

「遺物には触らない」「遺物を動かさない」「遺物を取り上げない」 考古学では何がどこにどのようにあるかを確認することがもっとも重要です。3つの原則を守り、遺物かな? と思うものがありましたら、月刊ダイバー編集部までお知らせください! >>hp@diver-web.jp

コラムニスト

写真=山本 遊児 (やまもと・ゆうじ)さん

水中文化遺産カメラマン/アジア水中考古学研究所撮影調査技師/水中考古学研究所研究員/南西諸島水中考古学会会員/The International Research Institute for Archaeology and Ethnology 研究員

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>>月刊ダイバーで連載中


文・解説=吉崎 伸 (よしざき・しん)さん

1957年、岡山県生まれ。現在、京都市埋蔵文化財研究所調査課長。その傍らNPO法人 水中考古学研究所理事長として、坂本龍馬の「いろは丸」など水中遺跡の調査・研究に携わっている。

ほし店長