BC排気で尻もち墜落 耳に激痛、マスクに大量の水

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アドバイザー:我妻 亨
vol.8 BC排気で尻もち墜落 耳に激痛、マスクに大量の水

危機からの脱出第8回メインイメージ

月刊ダイバーの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。更新は、毎月奇数週(第1・3・5週)の火曜日!
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。
第8回目は、アドバンス講習中に身体のバランスを崩し、マスクが水没、急浮上しかけてしまったケースです。

BC排気で尻もち墜落 耳に激痛、マスクに大量の水

ダイビング歴1年のIさん(20本/男性)

アドバンス講習で中性浮力の練習をしていたところ、急浮上・急降下で身体のバランスを崩し、マスクも水没して急浮上しかけた体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
1年前の冬、僕は伊豆でOWのCカードを取得しました。初めてのダイビングで、しかもドライスーツだったため、終始緊張。水中散歩を楽しむ余裕もなく講習は終了。そのためダイビングには興味があったのですが、冬場は敬遠してしまいました。そして7月になり、2回ほど伊豆へ出かけました。ウェットスーツではこれといったトラブルもなく、水中を楽しむことができたので、9月にアドバンス講習を受けることにしたのです。
アドバンス講習生は僕を含めて5人。ディープやナイトなど、1日目の講習はなんなく終了し、OW講習時とは打って変わり、とても楽しく行うことができました。
そうして迎えた2日目。1本目はピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー講習で、中性浮力の練習です。すでに8本のファンダイビング経験と前日の3本の講習で、落ち着いた浮遊感を感じられていた僕は「中性浮力はもうできるぞ!」と少し自信過剰になっていたのかもしれません。その時のインストラクターのブリーフィングも、右から左に聞き流していたように思います。器材を準備し、僕たちはEN口に向かいました。

巻き上がった砂地は、体験した中で最悪の透明度

水中は透明度10m前後とのこと。西伊豆でもとりわけ人気の高いそのビーチポイントは、土日ということもあり、すでにたくさんのダイバーが入っていました。
僕たちがENする頃には、1本終えてEXしてくる人たちも行列し、EN/EX口は大混雑。なんとか水中に入ると先陣ダイバーたちの影響か、透明度は10mとはいえないほど、視界は想像以上に不良です。今まで体験した中で一番の透明度の悪さに、余裕に構えていた僕も急に不安にかられ、いっきに緊張し始めます。心臓はバクバク、目をキョロキョロさせながら、はぐれないように、インストラクターを追いかけ前へと進みます。
グループについて進むと水深10mの砂地に到着しました。そこで中性浮力の練習をするようですが、僕は緊張してBCに給気するのを忘れていたのか、うまく浮遊感を得ることができません。僕だけでなく講習生5人ともが同じように砂地でジタバタしていたため、砂が大量に巻き上がっていました。

中層であぐらに挑戦仰向けに倒れてマスクに大量の水

砂嵐を避けるようにインストラクターが先へと誘導し、まずは海底でフィンピボットを練習します。肺の調整に少し慣れてきたところで、今度はインストラクターが2mくらい深度を上げ、あぐらをかいたまま中層にピタリとホバリングして見せます。「やってみて!」という合図で、僕たちもいっせいに中層に浮こうとします。
大きく息を吸い込み、身体が浮いてきたところで、僕もまねして恐る恐るあぐらをかいてみます。すると身体が後ろにひっくり返り、バランスを崩してしまいました。その日のタンクはスチールタンクだったので、後ろに引っ張られてしまったのです。体勢を立て直そうとしますがなかなか起き上がれません。そうして仰向け状態でジタバタし続け、ふと気づくと水面がどんどん近くなっているように見えました。 「ヤバイ! 急浮上してる!」そう思った僕はとっさにBCの空気を一気に抜きます。すると今度は急降下し始めた身体。と同時に耳に急激な痛みが走ります。尻もち姿勢のまま、足は上を向いてバタバタするのみ……落下を止められるわけもありません。おまけにレンタルだったマスクからは大量の水が浸入。視界も水で遮られ、鼻から水を飲んで咳き込み、何も対処できない僕はパニック状態に陥りました。

バランスを崩したまま急浮上と急降下 コンタクトも流される!

落ち続ける身体をコントロールできない中、鼓膜が突き破れそうなほどの耳の痛さに襲われます。そうこうしているうちに、お尻から水底に不時着。マスクに半分以上入った海水をどうしていいかもわからず「今すぐ水面に上がりたい。BCをパンパンにして浮上してしまおう」と、給気ボタンに手をかけたその時です。インストラクターが僕の身体を起こしに来てくれ、ひざ立ち姿勢に立て直してくれました。
そして、マスクをクリアするようにと、彼がマスクを押さえて頭を傾けてくれます。呼吸が不安定になっていたため、全部の水をクリアするのに3回。そうしてなんとか水を排出し、ゆっくりと目を開けると、今度は右目の視界だけがぼやけて見えます。どうやら着けていた使い捨てのコンタクトレンズが、右側だけ流されてしまったようです。視界も悪く、疲れ切っていた僕は「もう上がりたい」と伝え、そのまま全員でEXすることになってしまいました。
傷めたかと思っていた耳は幸い異常なく、予備のコンタクトレンズも持っていたので、視力も問題ありません。そして、2本目のナビゲーションダイビングの後半で、僕だけホバリングに再トライ。うつ伏せぎみでのホバリングでしたがOKをもらい、なんとかアドバンス認定の落第は免れることができたのでした。

PADIコースディレクターからのコメント

ブリーフィングには毎回注意を払い、適正なウエイト量を身に付けること

おそらく、必要以上に多くのウエイトを付けていたのでしょう。タンクの材質、使用する器材に合わせて、ウエイトの量を決めるところからダイビングは始まります。尻もち姿勢にならないためには、BCのセッティング位置、水中での姿勢に気をつけましょう。可能な限り前かがみ(うつ伏せ)ぎみの姿勢を取ります。
浮上した直接の原因は、透明度の悪さに緊張していたことと、仰向け姿勢で焦ったことで、速くて浅い呼吸になったことでしょう。ダイビング中は、息を吸うことよりも、ゆっくりと深く吐くことをつねに意識してください。そうすれば必要最小限のウエイト量で快適にダイビングが楽しめるはずです。適正なウエイト量ならば、急降下のようなトラブルも防げます。
今回のかたは、少し余裕が出てきたことで、ブリーフィングを聞き流していたことも問題です。混雑したビーチで、砂が巻き上がることはよくあります。対処法の説明もあったはずです。毎回きちんと耳を傾けるようにしましょう。

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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