目の前が真っ暗になり……あっという間に砂嵐に襲われる!

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アドバイザー:我妻 亨
vol.12 目の前が真っ暗になり……あっという間に砂嵐に襲われる!

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

目の前が真っ暗になり…… あっという間に砂嵐に襲われる!

友人と久しぶりのファンダイビングに行ったYさん(10本/男性)

砂地で生物を探すことに夢中になっていると、突然目の前が真っ暗に……水中砂嵐に巻き込まれた体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
僕はインストラクター資格を持つ友人Oさんの紹介で、去年の夏にCカードを取得しました。彼は3年前にインストラクター業を辞めていたのですが、知り合いのショップを紹介してもらい、伊豆で講習を受けました。

その後は、沖縄に行った際に潜ったきり。気づけば半年以上のブランクが空いていました。Oさんは、ときどき伊豆へ潜りに行っているようで、ブランクダイバーになっていた僕の話を聞きつけ、Oさんの引率で伊豆に潜りに行くことになりました。

時は4月下旬。伊豆の水温はまだまだ低い時期ということで、僕は初めてドライスーツを着て潜ります。しかし不安はまったくなく「BCに給気する代わりに、ドライスーツに空気を入れればいいんでしょ?」と余裕に構えていました。その日はOさんと友人Nさん、そして僕の計3人でのダイビング。Oさんはダイビング歴8年のベテランですが、僕たち2人は10本未満の超初心者。しかも不安どころか、Nさんは買ったばかりのカメラを水中デビューさせると声を弾ませ、僕も久しぶりのダイビングにワクワクしながら準備を進めました。器材のセッティングを終え、ドライスーツの扱い方をOさんに習います。

半年ぶりのダイビングで初めてのドライスーツ

ポイントは海況も穏やかなビーチでしたが、透視度は5〜8m。あまりよいとは言えない視界です。水深3mという地点で潜降を開始しますが、初めてのドライスーツ潜降。Oさんに手伝ってもらいながら水底に到着して、岩場を進んでいきました。

水深を下げていくと、視界も少し開けてきて、水深10mあたりで砂地に出ました。僕は上がったり下がったりを繰り返しながら、どうも沈みぎみ。必死でフィンキックをしていると、Oさんが「ドライに空気入れて」と合図をくれました。「あ、そうだった!」ドライへの給気が初めてだった僕は吹き上げが怖くて、そのときは、おそるおそる1回給気しただけで済ませました。

少し進んで、Oさんが砂地をウロウロと何かを探し始めました。ブリーフィングの時、「このポイントは砂地にウミテングをはじめ、小さな生物がいて、写真を撮るとかわいいよ」と教えてくれていました。きっと彼が何かを探してくれているのだろうと、僕たちも辺りの砂地をグルグル見て回ります。

突然の砂嵐で、前後左右、何も見えない

周辺を探していくうちに、ふと視界がなんとなくぼんやりしてきたように感じられました。「ん?」と思った矢先のことです。突然、僕の目の前が真っ暗になってきたのです。何か不吉な闇に包まれたかのように、あっという間のことで、何がなんだかわからず、2人の様子を確認しようとしても、50cm先も見えないほど。よく見ると、視界を覆うのは砂嵐のようです。「えっ、水中で砂嵐? こんなことってあるの?」状況が把握できないまま、一寸先も見えない中、僕は身動きが取れずにその場に立ち尽くしてしまいました。上を見ても見えない。前後左右も一面砂嵐。みんながどこにいるのか、どうしているのかもわからない。 「このままではダメだ……」そう思った僕は、視界不良の中で、2人がいたと思われる方向に少し進んでみます。前が見えないので、手を伸ばして手探り状態で探します。この時、僕は初めて「水中が怖い」と感じていました。そこが同じ場所とは思えないほどほんとうに一瞬の出来事で、狐につままれたようでした。「誰かいないの? お願い、誰か……」そんな思いで、必死に手を伸ばしながら少しずつ進みますが、何も当たりません。「この砂嵐が終わらなかったら、僕のエアもなくなって……」そんなことばかり考え始めると、怖くて身体が硬直してしまい、僕は水面に上がる勇気もありませんでした。

タンクが引っ張られ、 数メートル浮上

そんな状況がどのくらい続いたのか、しばらくすると誰かにタンクを引っ張られる感覚がありました。そのまま何メートルか引き上げられた僕は腕をつかまれ、振り返るとOさんの顔が見えました。「助かった〜」僕は全身の力が抜けつつも、OKサインをくれるOさんに、涙ぐみそうな顔でOKサインを返します。視界が開けたOさんの後ろにはNさんの姿も見え、僕らの下には大量の砂が巻き上がっている地点が……僕がさっきいたところです。それから3人で少しずつ浅場に戻り、無事に1本目を終了したのでした。

エグジット後、あの砂嵐が何だったのかを尋ねると、Oさんが砂地でウミテングを探していたら後ろから大量の砂嵐に襲われて、僕らが見えなくなっていたとのこと。推測するに、僕らが砂地を這うようにしてフィンキックをしていて砂を巻き上げ、大量の砂嵐を作ってしまったのだろうと。Oさんが少し浮上してみると砂嵐の中から2本のエアの柱が見え、1人ずつ引き上げてくれたようでした。自然に起こった砂嵐に巻き込まれたとばかり思っていた僕たちは、自分で砂嵐を引き起こしていたと知りました。

PADIコースディレクターからのコメント

ドライスーツの使い方と浮力コントロールのトレーニングを

今回のトラブルの原因は複合的なようです。経験の少なさに加えて、半年以上のブランク、初めてのドライスーツ、透明度の悪さからくる不安、浮力コントロールテクニックの未熟さ、砂地での身体の動かし方の意識不足……このような原因がすべての始まりでした。

まずは、ドライスーツでダイビングする場合の浮力コントロールを練習しましょう。あまり深くないダイビングで、1回の給気でも痛くはならなかたようですが、締め付けはあったでしょう。もう少し給気して、浮力コントロールをしてください。砂地で着底したら、足を動かすのはご法度。無意識に足を動かしてしまうダイバーを見かけますが、動かさないことを意識してください。砂地でフィンキックが必要な場合は、バタ足ではなく、アオリ足のキックを。砂の舞い上がりは少なくなります。もし砂嵐で見えなくなったら、数メートル浮いてみてください。全体が見渡せるようになるはずです。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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