ケーブダイブで耳に激痛 出口手前で進めない

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アドバイザー:我妻 亨
vol.15 ケーブダイブで耳に激痛 出口手前で進めない

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

ケーブダイブで耳に激痛 出口手前で進めない

パラオでの3本目のダイビングで洞窟を潜ったWさん(40本/女性)

エアドームを巡るケーブダイビングの出口寸前で、耳が抜けずにEXできなくなった体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
私があこがれのパラオに初めて行ったのは今年の5月。2年前に夫とグアムでCカードを取得し、沖縄やセブ島などを潜り、経験本数も30本を超えたところでした。

ダイバーの聖地パラオの初日は、1本目に「ジャーマンチャネル」2本目に「ブルーコーナー」を潜りました。パラオ屈指の実力ポイントに興奮の連続で、2ダイブでもじゅうぶん満足だったのですが、「もう1本、水深の浅い洞窟ポイントを潜りませんか?」と誘われ、せっかくなので行ってみることにしました。

耳抜きに不安を抱えつつ3ダイブ目へ

3本目に向かったのは「シャンデリアケーブ」という、世界的にも珍しい海中鍾乳洞が見られるポイント。1本目も、2本目も水深20mくらいまで潜ったのですが、ここは最大水深10m前後。中には4つの部屋があり、水面に顔を出せるエアドームに浮上して、また潜降、というアップダウンを繰り返すとの説明を受けました。

私はもともと耳抜きが苦手でした。げんに2本のダイビングで耳抜きが不十分だったのか、少し耳に違和感があり、耳が抜けるかどうか不安がよぎります。しかし夫をはじめ、他の人たちは楽しみな様子だったので、不安な気持ちを言い出すことができず、3つ目の部屋まで行ってみることにしました。

洞窟の入り口は、水深5mくらいの所に開いた大きな穴。私はゆっくり潜降していきますが、やはり耳が抜けません。たったの5mを数分かけて潜降し、ガイドの後に続いて穴に入りました。

1つ目の部屋は大きく、ライトを照らすと水面から大きなつららのような鍾乳石がいくつも浮かび上がり、思わず息をのみます。そのままいったん水面へ浮上し、第一のエアドームに顔を出しました。水面に浮いたまま、広い天井を覆う鍾乳石のアートを見ながら、ガイドの解説に耳を傾けるみんな。その傍らで、私はすでに耳が痛くてたまらず、「このアップダウンがあと2回も続くの!?」と恐怖に襲われます。

ひととおりの説明が終わった後、次の部屋に向けてまた全員で潜降し始めます。私は耳が抜けないながらも、暗闇の恐怖から置いていかれまいと付いていきました。無理な潜降で、あまりの耳の痛さに頭も割れるように痛くなります。「でもここで1人立ち往生したらはぐれる!」と、前の人を必死で追いかけます。気づくと2つ目の部屋に到着し、ふたたび水面に顔を出しました。

第2の部屋で耳と頭の痛さが限界に

1つ目の部屋よりは小さいものの、そこもまた天井一面の造形美。しかし、すでに私には観賞する余裕などありません。「もう我慢できない……。ここで正直に言わなければ」と思った私は、みんなが感心している中でガイドに「耳が抜けなくて、もう無理そうです」と伝えました。するとガイドは「次の部屋も同じようなドームですから、3つ目には行かずに、ここから出口に向かいましょう」と言ってくれました。私はみんなに申し訳ない気持ちと同時に、ホッと安心した気持ちでいっぱい。私の痛みが和らぐまでその場で長めに時間を取ってくれましたが、良くなる様子もなかったので「もうだいじょうぶです」と伝え、全員でふたたび潜降し始めました。

夫が私を支えてくれながら潜降しますが、耳は抜けてくれません。怖さから身体も硬直し、夫の腕をギューッと握ります。頭全体を襲う激痛のため、私はその場から動けません。何度も耳抜きをしてみるも、いっこうに抜ける気配はないまま、私は痛さのあまり目をつぶっていました。そんな中で夫に導かれるままゆっくりアーチをくぐり、なんとか1つ目の部屋に戻ってきました。海中鍾乳洞をもう一度堪能したくてもそれどころではなく、出口の青い光がぼんやり見えるだけ。しかもめまいを起こしていたのかグラグラと揺れて見えます。

あと一歩が進めず洞窟内で立ち往生

そんな状態で夫とガイドに導かれながら、出口の手前まで戻ってきました。「あと1回くぐれば外に出られる!」しかし、もう1mの深度も下げることができないほど、痛みが限界値を超えています。その頃には耳抜きも、力むことさえ痛くてできなくなっていました。出口はすぐそこなのに出られない状況が続きます。思考回路はマイナスに働くばかりでしたが「このままエアがなくなって死ぬより、耳の痛みに耐えたほうがマシ!」意を決して、夫とガイドにGOサインを出します。私は激痛から早く解放されたい一心で、ダッシュでアーチをくぐりました。外に出ると痛みを越えて麻痺しているような感覚で、めまいもひどく、ガイドのサポートを受けながらなんとかEXしました。

その後めまいは治まったものの、耳と頭の激痛は続き、病院に行くこともススメられたのですが、安静にして様子をみました。次の日も耳は抜けずに3本ともリタイアし、3日目の2ダイブのみで終了。帰国後もしばらく耳の違和感が抜けずじまいで、私の初パラオは無念な結果に終わってしまいました。

PADIコースディレクターからのコメント

浅い水深ほど圧力変化は大きい Uターンも事前に考慮する

水深の比較的浅いポイントとはいえ、上がったり下がったりの繰り返しになるダイビングです。耳抜きに問題がある状況では、そうしたダイビングは非常に難しいです。最初のエアドームへ無理やり行ったことも、違和感のある状態で先へ進んだことも、状況をさらに悪くしました。激痛は圧迫された鼓膜やサイナス(副鼻腔)の痛み、そして、めまいは圧平衡の不均衡に伴うものでしょう。深度変化(圧力)と体内の空間のスクイズ(体積)の関係は、浅い深度ほど慎重に対応するべきです。

耳抜きに問題があったら無理して先へ進まずガイドやバディに知らせ、Uターンすることもプランの中に入れておくべきです。難しいかもしれませんが、身体全体の力を抜いて落ち着いて自分のペースで移動します。浮上しても耳に違和感や激痛があったら、耳鼻科の医療機関を受診してください。耳やサイナスは、いったん壊してしまうとダイビングができる状態まで復帰するのが大変です。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

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アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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