エア切れ間一髪! 水深17mからの単独浮上

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アドバイザー:我妻 亨
vol.17 エア切れ間一髪! 水深17mからの単独浮上

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

エア切れ間一髪! 水深17mからの単独浮上

神子元島にダイビングに出かけたTさん(260本/女性)

潜降の時から激流で息切れ状態、そしてドリフト中に1人だけはぐれ、エア切れ寸前で単独浮上した体験を紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
ダイビング歴6年、伊豆半島をメインに潜る私は年に1度、神子元島に行きます。この体験をしたのは、今シーズンの9月中旬に神子元島で潜った時です。

その日はあいにく、日本の南に大きな台風が2つも待機していて、クローズするかどうかと悩むほどの荒れ模様でした。スタッフの判断でいちおう出航してみることになったのですが、海は案の定、波も高く、水面も激しく流れています。上級者ポイントといわれる神子元島を潜るのは初めてではないものの、さすがに緊張します。ガイドもいつも以上に丁寧なブリーフィングです。「残圧が70になったら教えてください。はぐれても探したりせず、すぐその場で浮上してください」などの注意を何度も念押しします。私は少し不安になりながらガイドの言葉を頭に叩き込み、激流の中にENしました。

体験したことのない激流 15分で残圧は70に

その日は私と私の友人2人、他3名のベテランダイバーとガイドの計7人のチーム。水面も激しく流れているうえ、ロープなしのフリー潜降だったので、間隔を空けずに落下傘状態でENします。透明度は30mと抜けていましたが、流れは想像以上で、これまで体験したことがない強さでした。私はさっそく潜降中に流されてしまい、必死にみんなの所に戻ろうとしますが、まったく追いつけません。フィンはスーパーミューで推進力に自信はあるはずなのに、いくらキックしても後退してしまうほど。「こんな激流初めて……」いっこうに進まない中、私は息切れしながら恐怖を感じます。

やっとの思いでガイドの近くに泳ぎ着くと、「その場で大物待ちをしましょう」という指示を受けます。マスクやレギュレーターが持っていかれそうな激流の中、根につかまってしばらく様子をうかがいます。私は息が上がりっぱなしで呼吸も激しく乱れ、ゲージを確認するとEN後15分ですでに残圧は70でした。「え? もうこんなに減ってる!」焦った私は根を這いつくばりながら、ガイドに残圧を伝えました。

その後少ししてガイドが「手を放してみんなで流れに乗りましょう」という合図を出したようでした。しかし、残圧を伝えた後、私はガイドに背を向けてつかまっていたため合図に気づかず、ガイドが鳴らすアラート音で振り返ると、すでに皆が流れに乗った後でした。

深度で速さが違う?グループから離れ気づけば1人

慌てて手を放し、流れに乗り始めた私ですが、怖さのあまり何かあったときにすぐ岩場につかまれるよう、少し深めの根すれすれの水深をキープしました。皆はもっと浅い水深で流れに乗っています。深度で速さが違ったのか、私だけ1人ますます離されていきます。全力で泳ぐものの、その距離はどんどん離され、そのうちに体力も尽きてしまい、気づくと誰も見えなくなっていました。

「まずい……1人? これってロスト? これって緊急事態?」私は怖くて思考回路は混乱し、パニックに陥ります。でも、冷静にならなくてはと思い、ひとまず近くの根につかまりました。「どうしよう? どうしたらいいの?」神子元島で起こったダイビング事故の話も思い出してしまいました。息も上がって緊張、不安、危機感、恐怖で頭は大混乱。「追いかけたほうがいいのかな」と思いながらも、ふと「はぐれたらすぐに浮上」というガイドの言葉を思い出しました。そしてゲージを見ると、なんと残圧は20。「これは追いかけてる場合じゃない!!」そう判断した私は、水深17mのその場から、1人で浮上する決心をしました。

フロートが膨らまない!渋いエアを吸って水面まっしぐら

予想外のエアの減り具合に動揺しましたが、「ゆっくり、ゆっくり」と唱えながら浮上し、水深5mでフロートを上げようと思いました。自分で上げたことはなかったのですが、いつもガイドがやっている様子を思い出し、フロートを広げてオクトパスから空気を入れてみます。しかしうまくエアが出てこず、「もうそんなに空気がないの?」ふと感じたエア切れの恐怖に全身が凍りつき、私はそのまま安全停止もせず、一目散に浮上しました。無我夢中で水面を目指し、最後の3呼吸はエアが渋かったのを覚えています。そうしてエア切れ間一髪で、水面に顔を出すことができました。

浮上後はなけなしの空気でBCに給気すると、私の前にちょうど船が見え、そこにはガイドと他のメンバーがEXする姿がありました。その後はすぐに船長が水面の私を見つけてくれて無事にEX。私は混乱と安堵感から、船に上がっても手足の震えが止まりませんでした。ガイドはドリフトしている途中で私がいないことに気づき、その場で浮上してメンバーをEXさせていたところで、私が浮上したようでした。相当のパニック状態だったようで、コンピュータを見ると水深17mから1分もたたないうちに水面に到着していました。しかしあのまま追いかけたり探したりしていたら、エア切れになっていたはず……。ガイドの丁寧なブリーフィングに感謝しています。

PADIコースディレクターからのコメント

トラブルが連続した場合、落ち着いて優先順位をしっかりつける

激しい流れで気持ちが焦り、恐怖を感じたことがこのトラブルの始まり。岩につかまっている間に呼吸を整えられるとよかったです。残圧の少なさに驚いても、焦ってはいけません。ゆっくり深い呼吸を意識すると気持ちも落ち着いて、冷静な対処ができるようになります。

ドリフトで流される場合、グループと同じ深度を保つことも大切。水底近くは中層に比べて流れが弱いことがあります。ガイドから目を離さず、自分の位置をつねに確認しながら動くことを考える必要があります。とくに流れが強い場合、全員いっせいに根から手を放すという指示は出るものと心得てください。

エア切れになりそうな場合、浮上スピードも考えなければならない要素の1つではありますが、優先順位をしっかりつけること。エアが完全に切れて単独なら、唯一の方法は息を少しずつ吐きながら水面に上がる(場合によってはウエイトを捨てる)。今回のエアの状況下での優先順位は間違っていなかったでしょう。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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