ドライスーツで逆立ちのままレギュが口から外れた

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アドバイザー:我妻 亨
vol.18 ドライスーツで逆立ちのままレギュが口から外れた

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

ドライスーツで逆立ちのままレギュが口から外れた

久しぶりにドライスーツでダイビングをしたHさん(30本/女性)

水中でドライスーツに翻弄され、レギュレーターも口から外れるなどのトラブルに次々と見舞われた体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
私は2年前にサイパンでCカードを取得し、年に数回リゾートで、たまに伊豆でも潜ります。トップシーズンに入った伊豆へ潜りに行こうと誘われ、11月頭、私は友人2人と西伊豆へと向かいました。

前日までいい海況が続いていたようですが、その日はあいにく透明度も下がり、5〜8m。流れもあるようです。しかしせっかくなので外洋ポイントに行きたいと伝え、ガイドをお願いしていた現地サービスの判断を仰ぎつつ、沖合いのポイントに行ってみることになりました。

9か月ぶり&3回目のドライスーツ

水温は20℃でしたが、寒がりの私はドライスーツをレンタルして潜ることにします。伊豆ダイバーの友人2人は自前のドライスーツを持っており、慣れたもの。いっぽう今回が3度目の着用となる私。ダイビング自体は9月に沖縄で潜っていましたが、9か月ぶりのドライスーツダイビングに少し不安もありました。

その日のゲストは私と友人2人のみ。外海に着くとやはり強い流れがあり、ロープにつかまりながら潜降するよう注意を受けます。私はあまりの流れにガイドに引っ張ってもらいながらブイまで泳ぎ、ゆっくり潜降しました。水中も流れが強く、ロープをつかんでいても身体が持っていかれるほど。潜降はなんとかできたものの、流れの強さと慣れないドライスーツの締めつけ感も相まって、心拍数がどんどん上がるのを感じます。

そんな緊張感からか私は動きが鈍くなり、水中を進むのも気づくと最後尾に。ガイドと友人の後を追いながら根に沿って進みますが、中性浮力がうまく取れずに手足はジタバタ。そうして不安定に泳いでいた矢先、空気がうっかり足に回り、逆立ち姿勢になってしまいました。噂には聞いていましたが、実際に体験するのは初めて。私は不安感からウエイトを重めに付けていたので、吹き上げられることはなかったのですが、制御不能な体勢にどうしていいかわからず。叫びたい気持ちで先を行く3人の影を確認しながらもがいていた、その時です。自分の手でレギュレーターのホースをひっかけてしまい、口からセカンドステージが外れて飛んでいってしまいました。

水中ではぐれた!海水の誤飲で咳が止まらない

想定外の状況に思わず息を吸ってしまうと、口には容赦なく海水が入ってきました。咳き込みながらも慌てて口を閉じ、息を止めます。しかし、海水が口から鼻のほうに流れていくのを感じ、鼻腔にも激痛が走ります。

「ダメだ、溺れる……上がりたい!」体勢も呼吸もどうすることもできず、私はそのまま水面に急浮上したい思いに駆られました。ふと首を後ろにひねって見上げるものの、水面ははるか遠くにあります。「息がもたないだろうな」私はひとまずリカバリーしようと、目線を泳がせながらセカンドステージを探します。すると、左前にふわっと浮かぶオクトパスが見えたので、すかさず口にくわえました。

あまりの混乱でよく覚えていないのですが、私は呼吸が確保できたところでなんとか身体を立て直すことができたようですが、そこにはもう誰も見当たりません。

「誰にも気づかれずに、置いていかれたんだ……」という焦りに加えて、海水を誤飲したせいで咳が止まりません。1人こんな状況に取り残された恐怖から「やっぱりもう上がりたい!」という思いが募り、1人で浮上を始めました。水深は15mくらいだったと思いますが、ガイドや友人を探すことも考えず、ゆっくり上がることより、一刻も早く水面に出たくてたまりません。安全停止もせずに、そのまま水面を目指しました。浮上スピードは一目散とはいかないまでも、かなり速かったと思います。

水面で大の字パンパンのドライで身動きが取れず

頭が真っ白な状態でなんとか水面に浮上し、「助かった─!」と顔を出した瞬間に、マスクとレギュレーターを外した私。顔を上げて思いっ切り咳き込むのですが、浮力の確保をしていなかったため、次の瞬間には身体が水面下に沈み、またしても大量の海水を誤飲。「空気を入れなくては!」しかし錯乱状態だった私は思わずドライスーツの給気ボタンに手をかけ、パンパンになるほど給気してしまいました。案の定、全身に浮力が回った私はあっという間に水面に大の字に浮かんでしまい、水面でも身動きが取れない状態に。そんな中、水面でバタバタしている私をボートスタッフが見つけてくれ、船を寄せてボートに引き上げてくれました。ガイドと友人たちも、私がEXしてすぐ後に浮上してきました。

しかし、この体験談はここだけの話。じつはガイドには「ちょっと苦しくなったので、上がっちゃいました」と伝えただけで、逆立ちになったこと、レギュレーターが外れたこと、そして急浮上したことなどは恥ずかしくて言えませんでした。減圧症を仮定した処置なども受けるべきだったかもしれませんが、言わずじまいで2本目も潜ってしまいました。その後は幸い、それらしき症状も出ていませんが、正直に報告するべきだったなと反省しています。

PADIコースディレクターからのコメント

不慣れの自覚があるのなら、場所よりスキルの習得を優先

ドライスーツに不慣れだったことが最初の原因です。不慣れという自覚があるのなら、穏やかなポイントを選択するところからスタートしましょう。吹き上がらなくても、足に空気がたまってしまった場合、前転するように身体を動かして、排気部分に空気を集めるよう意識してください。体勢の異常に焦り、暴れたことで次のトラブルを招いています。たまたまオクトパスが取れて呼吸を再開できましたが、トラブルに見舞われた場合、焦れば焦るほど負のスパイラルに陥りやすくなります。まずは落ち着くこと。それを肝に銘じてください。

ドライスーツは難しいものではなく、手順どおりに1つ1つの動作を確実に行えば、誰でも使いこなせます。インストラクターについて、給気、排気、水中での姿勢をきちんと身につけてください。水面でのドライスーツへの給気は最小限にすることも学ぶことの1つです。経験されたように、動けなくなります。水面での浮力確保はBCで行うのが基本です。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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