BC給気が止まらない! 水深18mからの急浮上

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アドバイザー:我妻 亨
vol.22 BC給気が止まらない! 水深18mからの急浮上

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

BC給気が止まらない! 水深18mからの急浮上

ダイビング歴4年のNさん(90本/女性)

8か月ぶりのダイビングでBCに空気を入れた途端、ものすごい音とともに給気が止まらなくなり、急浮上を余儀なくされた体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
私は4年前に沖縄でCカードを取り、年に数回リゾートで潜ります。頻繁には潜れないため、50本目くらいまでは毎回不安でトラブルも多く、いつもインストラクターに迷惑をかけてしまうストレスダイバーでした。そんな経験から、トラブル時にどうすべきかを頭に叩き込んでおくため、テクニック本などを読みあさっていました。最近はやっと不安もなくなってきましたが、これは今年の1月、7度目の沖縄に行った時の体験です。

給気ボタンを押した途端 破裂音のような響き

同じくダイバーの友人Aさんと午前中に沖縄入りして、午後にさっそくダイビングを楽しむため、那覇から船で約20分のチービシへ。8か月ぶりのダイビングで、久しぶりに器材を触ったとき、BCがクタクタな印象はありました。私はリゾートでしか潜らないつもりで、生地も薄いトラベル用BCをCカード取得後すぐに購入しました。買ってから4年間、1度もオーバーホールに出していませんでしたが、ダイビング後はいつも丁寧に水洗いをしています。「そろそろオーバーホールに出そうかな」と思いつつ、大好きな沖縄でのダイビングにワクワクしながら、器材をセットしていきました。

この日のゲストはAさんと私の2人のみ。ガイドは何度もお世話になっているインストラクターだったので、和気あいあいとした雰囲気の中、会話も弾み、盛り上がります。天候&海況とも穏やかで、透明度も15m。気持ちのいい水中にさっそくエントリーし、ガイドを先頭にAさん、私の順番で移動を始めました。

水深20mあたりで、潜降のときにBCを全排気したままだった私は身体が沈みぎみなのを感じ、BCに給気しようと思いました。そしてボタンを軽く押した瞬間、ブシューーッという今まで聞いたこともない破裂音のような音が響きました。続いて、腹部回りがキューッと締め付けられました。「いったい、なにが起こったの?」とっさに頭に浮かんだのは、8か月ぶりにいじった給気ボタンが吹き飛んだのかもしれない、ということでした。とにかく驚きました。

どんどん強くなる圧迫感に焦りながら身体をよく見てみると、BCがやたらと膨らんでいるようす。「これはボタンが押しっぱなしで給気が止まらないという状況なのか?」

話にはよく聞いていたトラブルですが、まさか自分の身に起こるなんて。ガイドとAさんを呼びたいと思っても、2人はどんどん先へと泳いでいきます。仕方なく、私は詰め込んだはずのトラブル対処法に思考を巡らせました。「まずは排気する……、だっけ!?」

左手で岩、右手でバルブ 身体は逆立ちに

思いついた方法を試そうと、右肩のバルブから排気してみます。そのまま近くに見えた岩に左手を伸ばしてつかまり、右手では排気と両手がふさがった状態。「ここからどうしたらいい? このままだとエアも底をついちゃう」私は排気をいったん止めて、右手で給気ボタンを直そうと、引いたり押したりしてみました。しかしまったく効果はなく、そのうちBCはアッという間にパンパンに膨れ上がり、身体は左手を支点に逆立ちになってしまいました。

「排気をしなきゃ」と思っても、私のBCは右肩にしか排気バルブがついておらず、逆立ち姿勢では排気ができません。必死でフィンキックをしながら姿勢を立て直しては、右肩からいっきに排気。そしてまた排気をやめて、右手で給気ボタンをいじりますが微動だにせず、中圧ホースを抜こうとするも外れません。そのうちにまた逆立ち姿勢になっては必死でフィンキック……。この繰り返しで私の焦りは募り、息も上がって呼吸も苦しくなってきました。

涙でぼやける視界 排気を続けながら大の字で急浮上

ダイブコンピュータを見ると水深は18m。ガイドとAさんの姿はもう見る影もありません。私は覚悟を決め、浮上スピードを抑える最大限の努力をしようと、排気をしながらうつぶせで大の字になって、つかんでいた岩から手を放しました。あれよあれよという間に離れていく岩を見ながら、浮上スピードの速さを実感する私の目には涙があふれ、視界もぼんやり。水面はどんどん近づき、私はそのまま浮上をしていきました。

水面に出ると、右肩からはブシューーーッという大きな排気音。私はすでに大泣き状態でしたが、船を探そうと辺りを見回したところ、ガイドとAさんがすぐ近くで浮上してくるのが見えました。ガイドが船を呼んでくれて、なんとかEXすることができました。

EX後の話では、ガイドは私がいないことに気づいて戻ったところ、浮いていく私を発見したそう。思えばセッティングの時、レギュレーターと残圧の確認はした覚えがありますが、会話にかまけてBCのチェックは怠ったような。その日は2本目を中止し、純酸素を吸って安静に。2日目からはBCをレンタルして潜り、自分のBCは帰宅後すぐにオーバーホールに出しました。

PADIコースディレクターからのコメント

プレダイブチェックを習慣づけ、BCも定期的にオーバーホールへ

気づいているとおり、BCのメンテナンス不良が原因です。また、EN前にBCの給排気をチェックしなかったのも一因です。

給気ボタンを押して戻らなくなったら、まずは溜まっていく空気を排気すること。通常のインフレーターのタイプであれば、排気ができるボタンがありますから、左肩のホースを高く持ち上げ、排気ボタンを押して排気。深度をできる限りキープして、インフレーターに繋がっている中圧ホースを外せば給気は止まります。バルブでの排気でもOKですが、中圧ホースを外す作業をしやすいので、状況が許せば排気ボタン使用のほうがベター。空気の圧力がかかっているホースは外しにくいですが、カプラーを押し込みながら外せばできるはず。どうしようもない場合はできるかぎり浮上速度を遅くする姿勢(フレアリング)で、浮上しましょう。

予防策は、定期的な器材のメンテナンスを行うこと。レギュと同時にBCのインフレーターもオーバーホールに出しましょう。バディ同士での器材のプレダイブチェックも忘れずに。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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