マウスピースが外れた ! オクトパスも見つからない

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アドバイザー:我妻 亨
vol.26 マウスピースが外れた ! オクトパスも見つからない

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

マウスピースが外れた!オクトパスも見つからない

ダイビング歴5年のNさん(110本/男性)

レンタルのレギュレーターに自分専用のマウスピースを取り付けて潜った際、水中で外れてパニックになった体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。
僕は5年前、伊豆でCカードを取得しました。ダイビングを始めたきっかけは南の島へのあこがれでした。初のリゾート、沖縄を訪れたのは2年目の7月。経験本数も30本を超え、水中で余裕を感じれるようになった頃でした。

この時、僕は友人2人と沖縄に飛び、2日間のダイビングを楽しむ予定でした。1日目は到着後に本島で2ビーチダイビング。透明度も生物も想像以上で、初めての南国を満喫。ただ、水中で呼吸をするたびに、レギュレーターから不気味な異音がするのが気になりました。僕は講習修了と同時に器材一式を購入しましたが、不調を感じたのはこれが初めて。まだ満2年も使っていないという甘えから、1度もオーバーホールに出していませんでした。

振り返った瞬間、喉の奥まで、海水が一気に流れ込む

ガイドにレギュレーターの不調を相談しますが、その場では原因が特定できないとのこと。そこで2日目はレンタルで潜ることにしました。ただ、僕は普段、歯形まで形状記憶するマイ・マウスピースを使っていました。この時も自分のマウスピースでないと不安な気持ちがぬぐえず、マウスピースだけは自分のものを使わせてもらうことにしました。以前に何度か自分で交換したこともあり、この日も結束バンドを使って自分でマウスピースの付け替え作業を行い、次の日に備えました。

2日目は那覇からボートに乗って、ケラマの海に向かいます。1本目は、砂地にサンゴ根が点在する穏やかなポイントです。有名なケラマの海に潜れるんだと思うとワクワクしながら、準備を進めます。しかし、器材に対する不安はあります。何度も何度もレギュレーターの作動確認をする僕。器材を背負ってからも、ちゃんと呼吸ができるか、マウスピースはOKか、とチェックを重ねます。

そうして水中にENし、10分くらい水中散歩を楽しんだ頃だったでしょうか。ふと、仲間の2人がどこにいるのか気になり、周りを確認しようと顔を左に向けて後ろを振り返った、その時です。突然、口からものすごい勢いで海水が入ってきました。一瞬、何が起こったのかわからないまま、反射的に喉の奥を必死で閉めようとしますが、海水は容赦なく喉の奥を押して入り込んできます。僕は動転したままその場に着地。苦しさを堪えながら口もとを手で探ってみると、そこにあるはずのセカンドステージがありません。代わりに、ゴム製のものが指先に触れました。 「もしかしてこれは、マウスピース?」目線を下に向けてみると、マウスピースのないセカンドステージがゆっくりと沈んでいくではありませんか!

口にあるのはマウスピースだけ

僕が取り付けた結束バンドの締め具合が足らなかったのか。ようやく状況がのみ込めた僕は、その数秒の間に、息苦しさと心臓の鼓動があっという間に加速するのを感じます。

呼吸ができないうえ、脳に酸素が回らなくなったのか、視界までぼやけてきます。マウスピースだけをくわえた口もとはぽっかりと開いたまま。ひとまずマウスピースを口から外しました。咳をしたくても息も吸えず、吸おうとすれば鼻に海水が逆流して激痛が走る。まさに、死にそうな苦しさでした。

「あ、オクトパスだ!」意識が遠のきそうな中、突然の閃きを頼りに必死でオクトパスを探します。ところが普段使っているレギュレーターではないため、オクトパスが右にあるか、左にあるかもわかりません。思えばEN前、僕が必死に確認したのはメインのセカンドステージのみだったのです。

後ろにいたバディのオクトパスに救われた

息ができなくなって20秒以上、苦しさも限界に達してきます。手探りでホースを探しますが、苦しくて手もともおぼつかず。ようやくホースに触れたかと思えばゲージでした。「誰か、誰か!!」僕はもう、手をバタつかせながらもがくしかできませんでした。

と、そんなやさき、後ろにいた仲間の1人が僕の異変に気づき、助けに来てくれたのです。横から覗き込み、口に何もくわえていない僕の顔を見て、咄嗟に彼のオクトパスを渡してくれました。その時の僕の顔といったら、瞳孔が開いたような目でどこを見ているのかわからず、瀕死の形相だったとか。僕はオクトパスをかじりつくようにくわえて呼吸を再開し、落ち着こうとするものの苦しさと咳が止まりません。僕たちに気づいたガイドも隣でサポートしてくれています。僕のセカンドステージを見て状況を把握したガイドは、そのままでは僕が危険と判断し、全員でその場から浮上して、1本目をEXしたのでした。

浮上後も胸の違和感や鼻の痛みがしばらく続き、その日のダイビングはリタイアして船上で安静に過ごしました。せっかくケラマに行ったのに残念でしたが、バディの有り難みを実感しました。帰宅後は自分のレギュレーターをすぐにオーバーホールに出し、その後はトラブルもなく、楽しくダイビングを続けています。

PADIコースディレクターからのコメント

トラブル回避の有効手段
バディシステムを意識する

原因は、マウスピースの取り付け不良と不慣れな器材の取り扱いです。マウスピースが外れたことで慌て、とっさの対応ができなかったわけですが、バディシステムの正しい活用への意識の低さもトラブルの原因の1つです。自分のバックアップ空気源(オクトパス)を探すのも1つの方法ですが、バディが近くにいるのであれば、落ち着いてバディからオクトパスを受け取り、呼吸すれば大きなトラブルには至らなかったはず。1人でなんとかしようと考えないほうが、簡単に解決できたかもしれません。

マウスピースなどの結束バンドは、本来専用の締め具できちんとした強さで締めるもの。ダイビング器材のメンテナンスなどは、きちんとトレーニングを受けるか、プロにやってもらうのが安心です。またバディは、いっしょに潜る人のことではなく、器材トラブルの場合のバックアップだと思うことも大切。そのため、付かず離れず、お互いの距離を保って潜ることが必要です。そして、器材のオーバーホールは、1年に1度、または100本に1度が目安です。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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