4年ぶりのナイトダイビング 真っ暗闇で、二度もロスト

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アドバイザー:我妻 亨
vol.31 4年ぶりのナイトダイビング 真っ暗闇で、二度もロスト

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

4年ぶりのナイトダイビング 真っ暗闇で、二度もロスト

ダイビング歴5年のFさん(40本/女性)

4年ぶりのナイトダイビングで二度も取り残されて迷子に。過呼吸をこらえながら、暗闇の中を単独浮上した体験をご紹介します。

以下はダイバー本人の体験談です。

私は、5年前に沖縄で夫といっしょにCカードを取得しました。しかし、半年後にアドバンス講習を受けて以来、ブランクダイバーのまま3年間潜らずじまい。そんな私たちも昨年の夏から、友人の誘いで伊豆に通い始めました。そしてこれは昨年の秋、私がまだ20本目の頃に体験した出来事です。

この日は1泊2日で、友人2名と夫と私、計4名で西伊豆を訪れました。夫と私は初めて潜るポイントですが、友人は何度も来ているようで、現地ガイドとも顔見知りです。この日は3本目にナイトダイビングをすることになったのですが、私は4年前の講習以来で、ナイトをファンで潜るのは初めて。講習でもあまり楽しめなかったので不安でいっぱい。しかし、みんなに誘われて行ってみることにしました。

頼りない小型ライトに不安が増幅

ダイビングは2か月ぶりでしたが、昼間はトラブルもなく外洋ポイントを2本楽しみました。その後、日が傾くのを待ってナイトダイビングへ。ポイントは内海の砂地ポイントで、ガイドのブリーフィングに耳を傾けながらも、「迷ったらどうしよう。しかも私のライトは小さいし」と悪い妄想が浮かぶばかり。そんな私を「いっしょにいるからだいじょうぶ!」と夫が励ましてくれます。

不安を抱えながらボートに乗り込み、いざポイントへEN。日没直後で空はまだ少し明るかったのですが、水中はすっかり暗闇に包まれています。私はロープにつかまりながら恐る恐る潜降し、水中ライトを回して海底を見渡します。といってもライトは小型で思った以上に頼りなく、恐怖は増すばかり。夫も同じライトだったので「このライト、暗いね」と会話します。全員が水底に集合したところで、ガイドが「こっちへGO!」と合図し、みんなで進み始めました。

しかし私は緊張していたためか、昼間と違って身体のバランスが思うように取れず、フィンキックもままなりません。暗さのせいで平衡感覚が鈍っていたのでしょうか。ガイドのすぐ近くにいたかったのですが、気づけば最後になっていました。近くにいた夫に「OK?」と聞かれ、私はその場に着底し、持っていたスレートに「バランスが取れない」と書いて違和感を伝えました。すると夫が私のウエイトなどを確認してくれたのですが、ふと気がつくとガイドたちの姿がどこにも見当たりません。

ガイドを見失い別グループからも引き離された

「え? みんなどこ行った?」2人で360度見回しますが、光はどこにも見えません。私は一瞬にして心拍数が急上昇するのを感じました。水深を見ると16m。夫もさすがに動揺しているようで「どうしよう……」と2人で顔を見合わせたまま、どうにも動けずにいました。

そうして数分立ち往生していたところに、幸い近くを泳いでいた見知らぬ3人のグループが近寄ってきてくれました。そしてガイドらしき人が「こっちにおいで」と合図をくれ、私たちはひとまずそちらについて行くことにしました。

ところがそのガイドの泳ぐペースは驚くほど速く、またしてもついて行けずにどんどん離れる私。早く浅場に連れ戻してくれようとしたのかもしれませんが、その速さは途中で息切れしてしまうほど。みるみるうちに3人の姿も遠のき、息苦しさから私はふたたび砂地に着底しました。夫は付き添ってくれていますが、真っ暗闇の中に二度も置いてきぼりになった私たち。2人のライトを合わせても明かりはじつに心細く、心臓の鼓動は尋常じゃない速さでドクドクと高鳴るばかりでした。

残された選択肢は単独浮上のみ

夫は終始、周りを見回して光を探しながらも、私を心配して「落ち着け、落ち着け」と何度もアイコンタクトをくれます。それでも、私はあまりの恐怖で過呼吸のように胸が苦しくなってきました。夫の腕をぎゅっと握り締めながら、頭は混乱状態で何も考えられません。そんな中、夫がスレートに「この場で浮上しよう」と書いてきました。水深は10m。夫も私も単独浮上なんて経験したこともありません。しかし「もはやそれしかない」という夫の冷静な判断でした。気持ちを奮い立たせた私はOKサインを出し、ブリーフィングで聞いたとおりにライトを上に向けます。そして夫にしがみつきながら、ゆっくりフィンキックを始めました。

水面までずいぶん時間を要し、ようやく光が反射する水面が見える頃、私は号泣していました。水面に顔を出すと、船がこちらに向かってきます。大声で叫ぶ夫の横で、大泣きし続ける私。よく見ると船にはすでに元のガイドと友人2人が乗っていました。彼らは私たちを見失った後、先にEXして船上から探していたところに、私たちが浮上してきたようでした。

私にとっては水中で初めての恐怖体験だったので、EXしてもしばらく涙が止まらず、ガイドも何度も謝ってくれました。残念ですが、もう二度とナイトダイビングはできそうにありません。

PADIコースディレクターからのコメント

潜る前に不安は解消しよう
ナイトでは明るいライトが必携

ナイトという不慣れなダイビングでの不安。そして、暗くて周りが見えないことによる心理的な恐怖がそもそもの原因です。さらに、はぐれた混乱から浮上を思いつかず、別グループについて行ったことが状況を複雑にしています。 

はぐれたと思ったら、慌てず水面を確認しながら浮上しましょう。他のグループと遭遇しても、自分ははぐれているのですから浮上することが一番の安全策です。そして、ナイトダイビングでは可能な限り明るいライトを使います。そうすれば、ある程度離れてもダイバー同士の認識ができます。小さく暗いライトで、水中でダイバーを探すのは困難です。

また、不安があるのなら、ガイドやインストラクターに早めに伝えましょう。今回も事前に伝えていれば、ガイドもいつも以上に水中で気にかけてくれたはず。それでも、今回のようにはぐれてどうにもならなくなったら、昼でも夜でも、「ゆっくり浮上し、水面で浮力を確保すればだいじょうぶ!」と考えてみてください。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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