バルブを戻しすぎたままEN 水深20mで突然の給気停止

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アドバイザー:我妻 亨
vol.36 バルブを戻しすぎたままEN 水深20mで突然の給気停止

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

バルブを戻しすぎたままEN 水深20mで突然の給気停止

ダイビング歴15年のKさん(550本/女性)

OW講習以来1年ぶりのダイビングで、バルブを全開した後3回転も戻してEN。水中で突然エアが吸えなくなった体験をご紹介します。

私は15年ほど前に友人と沖縄でCカードを取得しました。これはその約1年後、2人で2度目の沖縄を訪れた時の出来事です。

講習でお世話になったショップを利用し、慶良間諸島へ向かいます。とはいえ、講習以来潜っていない私たちはダイビング自体1年ぶりで、ボートダイビングも初めて。講習時と同じインストラクターがガイドだったので丁寧にケアしてくれますが、不安でいっぱいです。

講習以来1年ぶりでセッティングさえもおぼつかず

さっそく大きなボートに乗り込み、器材をセッティングします。しかし私たちは手順をすっかり忘れており、ガイドに一から教えてもらいながら装着。ところが、ボート移動が初めてだった私は船に酔ってしまい、吐き気と闘いながら、約40分ほどしてケラマに到着しました。

1本目は穏やかな砂地ポイントを潜ります。ガイドは顔色の悪い私を気遣いながら、ボートダイビングの方法や注意点などを説明してくれました。しかし私は吐き気がひどく、ブリーフィングも右から左。バディを組む友人に助けてもらうようお願いしながら、ENしました。すると、水中は見たこともない透明ブルーが広がり、砂地は真っ白に輝いていました。私の吐き気も少し吹き飛び、景色に感動しながらゆっくりとロープ潜降をします。

グループ全員が水深8mの海底に集合した後、泳ぎ始めました。砂地はなだらかな傾斜が続き、私たちは少しずつ深度を下げていきました。しかし、なぜか深くなるにつれて息が苦しくなるような、異様な呼吸の詰まりを感じてきた私。「船酔いのせい?」と思いつつ、どんどん渋くなる呼吸感に恐怖心は膨らむばかり。足ももたつき、私は気づくと最後尾を泳いでいました。

しばらくすると大きな根に到着し、ガイドは生き物を紹介しながら根の周りを一周します。水深は20m近く、その頃には空気量の少なさを明らかに感じられるほど息苦しくなっていました。と、そんなやさき、クッという異音とともに口から空気が来なくなり、私は突然、呼吸ができなくなってしまったのです。

潜り進んでいくと突如、呼吸不能に

「え、空気が来ない!! なんで?」ふと残圧計を見ると、なんとゼロになっているではありませんか! 陸上で確認したときは確かに200気圧あったはず。ENして10分も泳いでいないのに、エア切れなんて考えられません。私は訳がわからず、とっさにすぐ前にいたバディのフィン先をつかんで呼び止めました。

ところが、息ができずに完全に思考機能が停止した私は、この状況をどう伝えていいかわかりません。突然の出来事で正気を失った私は、ただ目を見開いて首を左右に振ることしかできませんでした。バディも訳がわからず、うろたえるばかりです。

と、その時、前方からガイドが泳いでくる姿が見えました。私はガイドに向かって手を伸ばし、首を振り続けます。ガイドはすぐにトラブルを察したようで、私の口からレギュレーターを外し、ガイドのオクトパスを押し込んでくれました。

一度パージをしてもらった後、息を大きく吸い込むと、すうっと肺に空気が入ってきます。苦しみから解放された私は夢中で呼吸を繰り返し、ガイドも「ゆっくり深呼吸を」と指示をくれます。その間、ガイドは私の残圧計を確認し、バルブ回りを操作しているようでした。

ガイドに助けてもらうも、原因が理解できずに積もり積もる恐怖心

私が落ち着いてきたのを見計らうと、ガイドが状況を説明してくれたのですが、バルブの締めすぎで空気が来なくなったとのこと。私のセカンドステージをパージしながら「しっかり開けたからもうだいじょうぶ」と見せてくれます。 「ちゃんと開けたはずなのに……」私はどこか腑に落ちない気分でしたが、残圧は120に戻っていました。

私はおそるおそる、ガイドのオクトパスから自分のセカンドステージにくわえ直し、ゆっくり息を吸い込みます。すると、さっきまでの呼吸の詰まりはみじんも感じられず、スムーズに空気が流れてきます。相変わらず状況がのみ込めないまま、しばらく呼吸をして問題なかったので、ダイビングを続けることにしました。しかし、私はレンタル器材を借りていたので「このレギュレーターが変なんじゃない?」と不信感を募らせながら、1本目を終えたのでした。

EX後、トラブルについてガイドに話を聞いたところ、私は自分が致命的なミスを犯していたことを知ったのです。セッティングの際、バルブを全開にした後「半回転」戻すべきところを、聞き間違えて「3回転」も戻していたのです。レンタル器材のせいではなく、自分のミスと知った時は恥ずかしさでいっぱいでした。水中ではとても恐ろしい思いをしましたが、バルブを締めすぎたまま潜ると空気が流れなくなるとは知らなかったので、いい経験だったと今では思っています。

PADIコースディレクターからのコメント

EN前のバディチェック、セルフチェックは必ず行う癖をつけよう

中途半端な開け方のままある程度の深度まで潜ると、タンク圧が極端に低い表示になったり、呼吸ができなくなったりします。これは、バルブを多めにクローズ方向へ回してしまったか、もしくはEN前のチェックを怠ったことなどが原因です。 

今回のケースはエアが出なくなってしまったので、落ち着いてバディとエアをシェアし、バルブの開け方を確認すればいいでしょう。潜降開始から長い時間がたっていたわけでもなく、焦ってパニックになり暴れたわけでもなさそうなので、レギュレーターに十分エアが供給されていなかっただけのこと。慌てずに対応すればOKです。

器材装着後は、バディ同士で必ずプレダイブセーフティチェックを。バルブが開いているかを確認し、EN前に残圧計を見ながら数回パージボタンを押してみましょう。エアが出たときに残圧計の針が振れたら、バルブの開け方が不十分です。ちょっとしたことなので、自分自身で確認する癖をつけましょう。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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