水深30mでエアが激減!急変した流れに吹き飛ばされる

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アドバイザー:我妻 亨
vol.38 水深30mでエアが激減!急変した流れに吹き飛ばされる

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

水深30mでエアが激減!急変した流れに吹き飛ばされる

ダイビング歴8年のKさん(450本/男性)

上級者ポイントを潜っていたとき、浮上するにつれて流れが激変。残圧も少ない中で激流に翻弄され、一瞬で吹き飛ばされた体験をご紹介します。

僕は8年前に和歌山でCカードを取得し、紀伊半島を中心に潜っています。これは5年前、和歌山で潜った時の体験です。

この日はいつも利用しているショップの日帰りツアーでした。目的は、経験本数100本以上ダイバー限定の外洋ポイントを潜るためです。僕も200本を超え、自己管理に慣れてきた頃にようやく潜りに行けた上級ポイントでした。

ここは大きな根があり、棚上で水深14m、下は水深60m以上まで落ちている豪快地形も見ものです。ゲストは4人、今回は水深30mまで行く予定で「残圧が100と70になったら教えて」との指示がありました。潮当たりがよく、朝の時点ではほどほどに流れているとの情報でした。

さっそく港からボートに乗り込み、7分程でポイントに到着します。海面は波もなく、一見穏やかに見えました。ワクワクしながらENすると、すでに流れはありますが、ロープをつかむほどではなかったため、全員フリーで潜降していきました。 水深15mの棚上に到着すると、ガイドが流れに逆らって泳ぎ始めます。僕たちも後に続き棚の縁まで行くと、下には50m近い落差のあるドロップオフが見えました。迫力の光景に圧倒されつつ、ハンマーヘッドシャークも現れると聞いていたので、期待も膨らみます。

流れに逆い続け、水深30mに到着するもすでに残圧は100

そのままガイドを先頭に、流れに逆らいながら水深30mまで潜ります。途中で残圧を確認すると、EN後10分なのにすでに100になっていました。僕はふだんからエアの消費が多く、この時は深い水深でさらに消費が激しかったと思います。しかしガイドがずいぶん前にいて、「流れに逆らって知らせに行っても、余計に消費しそう」と、この時は伝えませんでした。

そのうち、ガイドが少しずつ水深を上げ始めました。ところが今度は浅くなればなるほど、全身が強く引っ張られる感覚を感じます。「なんか、流れが強くなってない?」僕は何人かと目を合わせますが、みんな不安そうな面持ちでガイドの様子をうかがいます。水深20m辺りで、残圧をもう一度確認すると、すでに70になっています。「えっ? ヤバくないか?」僕は一瞬で血の気が引くのを感じました。そんな危機感をさらにあおるように、前方から容赦なく強い流れが僕たちを襲います。するとガイドがブイの方向を指さして「あっちに戻ろう」というサインを出してきました。僕は目が合ったタイミングで、ガイドに「70」のサインを出して伝えた後、棚上を目指して泳ぎ始めました。

棚上で激流にもまれ一瞬も手を離せないほど

流れに翻弄されながら棚上に戻ってくると、そこはEN時の様子とは一変。海底の岩につかまっても、手を放せば一瞬で見えなくなりそうなほどの激しい流れに激変していました。ここまでの激流は僕も初めてで、一気に緊張と恐怖が渦巻きます。「これでブイまで戻って安全停止……俺のエア、持つかな……」そう思うと恐怖で身体が硬直します。僕はグローブもしていなかったので、指がちぎれそうな痛みも感じながら、無我夢中で岩伝いに移動していきました。

ロープに手を伸ばすもあっという間に5m以上飛ばされる

そうしてロープが見える所まで戻り、ガイドが1人ずつロープにつかまらせます。3人を先につかまらせて、最後にガイドが僕の腕をつかんで誘導してくれます。それはロープに手を伸ばし、ガイドが僕から手を放した、一瞬の出来事でした。まだロープに手が届いていなかった僕は、あっという間に流されてしまったのです。5m以上は吹き飛ばされた僕は、死にものぐるいで海底をつかみ、流れに逆らいながらほふく前進をします。ガイドも再び僕をつかまえてくれ、ようやくロープに戻ります。そして全員で水深5mまで浮上を始めました。

普通なら潜水禁止かと思うほど激しい流れで、ロープに掴まった僕たちはこいのぼり状態です。僕は指に何か所か擦り傷を負いながらも両手で必死につかみ続けます。ガイドが全員の残圧をチェックしますが、僕はすでに20でした。しかしガイドも「OK」と言ってくれたので、「大丈夫!」と言い聞かせ、安全停止を済ませて水面に浮上しました。 浮上してひと安心かと思いきや、水面も激しく流れているため、ボート脇のラダーまで泳いでいくのも困難です。そこで、船長がボート後方にカレントラインを流してくれて、全員でそのロープにつかまり直しました。そして「このまま移動するからレギュくわえてしっかりつかまってて」と言われます。エアが10だった僕は不安で堪りませんでしたが、トローリングの餌の気分で、数百メートル引っ張られた僕たち。そうして流れが弱いエリアまで移動したところで、全員無事にEXしたのでした。

EX後は全員極度の疲労でぐったりだったため、2本目は長めの休憩後、浅瀬のビーチポイントを潜り、この日のダイビングを終えました。せっかくの海も残念な結果で、あれ以来、僕はこのポイントには足が向かずにいます。

PADIコースディレクターからのコメント

不安要素があるときは事前にガイドに伝えることでリスク回避を

エアの消費が速いことによる、不安感からのストレスがかなりあるようです。ハードなポイントでのダイビングにも関わらず、不安要素を事前にガイドに伝えていないと、トラブルのもとになります。擦り傷などは、グローブを着用していなかったという些細なことが原因です。


ダイビング中に流れが激変した場合、水底や岩につかまりながら、身体を固定できるような場所を見つけて少しずつ移動するのが重要です。しっかりつかむことが大切なので、流れが速いポイントの場合は、必ずグローブを着用すること。これだけで無駄な負傷をかなり防げます。また、カレントフックなどのサポートグッズを使用すべきです。前述のとおり、エアの消費が早いことなど、ご自身の基本的な情報はガイドにきちんと伝えることも忘れないでください。


また、万が一流された場合のことを考えると、シグナルフロートなどのグッズを携行することも忘れないようにしましょう。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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