ENで溺水、水中で急浮上……オーバーウエイトの恐怖

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アドバイザー:我妻 亨
vol.39 ENで溺水、水中で急浮上……オーバーウエイトの恐怖

DIVERの長期好評連載「危機からの脱出」では、読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介しています。
<ダイバーオンライン>では、読み損ねた方や振り返って知りたい方のために、バックナンバーを連載でご紹介。
実際にあったトラブルから学べることはたくさんあります。自分ならどうするか、考えながら読んでみてくださいね。

ENで溺水、水中で急浮上……オーバーウエイトの恐怖

ダイビング歴5年のIさん(110本/女性)

大幅なオーバーウエイトのまま、BCもフィンも付けずにENして溺水。その後のダイビングでは後半に急浮上を余儀なくされた体験をご紹介します。

私は5年前に友人Yさんと伊豆でCカードを取得し、年に数回リゾートの海を潜ります。これは、私がダイバーになりたての頃に体験した出来事です。

Cカード講習から半年のブランクが空いた後、私とYさんはグアムに行きました。雑誌などを見て海の魅力にどんどん引き込まれていた私は、半年間、毎日のようにダイビング情報を集めていました。上達スキルや裏技などの知識もたくさん詰め込み、器材一式とウエットスーツも購入しました。

1日目からボートダイビングで、ボートが初めてだった私たちはガイドのサポートを受けながら準備を進めます。船はそれほど大きくなく、私たちを含むゲスト4人+ガイドと、もう1グループ+ガイドの乗り合いです。港から10分程度でポイントに到着し、ブリーフィングを受けた後、さっそく準備を始めます。私が着るのは買ったばかりの5㎜ウエットスーツ。「新品スーツは浮力が大きい」と知っていたので、私は体重50㎏で6㎏、と重めのウエイトを用意しました。

私がウエイトを装着していると、別チームのガイドがBCを先に海へと投げ入れ、海面でBCを着ていました。私もENの裏技としてこの方法を知っており、実際に行うその姿がとてもカッコよく見えました。「私もやってみよう!」私はすぐにBCをセットしたタンクを海に投げ入れ、マスクを付けながら、隣のYさんに「先に行くね!」と声をかけると同時に、海に飛び込みました。

BCもフィンも付けずEN。海底に向かって一直線に沈み続ける

ドボンと海に入ると視界は水面下。私はそのまま水面に顔を出せるはず、と思っていたのですが、いつになっても身体は水中に沈んだまま。それどころか、頭上の水面がじょじょに遠ざかっていくではありませんか! 私はこの時、うっかりフィンも付けずに入水していました。手足を必死に動かすも推進力はゼロ。身体は容赦なく沈み続けます。「なんで? 苦しい、上がりたい!!」私は水中で暴れながら口だけはぐっと閉じ、息を止めるのに精いっぱい。素足にもかかわらず、私は死に物狂いでキックし続けました。

そこへ、ふとダイバーが近づいてきて私の手をつかみ、水面に引き上げてくれました。さきほど私がまねしようとした、別グループのガイドです。私は息こらえも限界に達し、気を失う寸前。Yさんいわく、水面に顔を出した私は、顔色が真っ青で瀕死の形相だったそうです。水面ではフィンだけ付けた私のガイドが私のBCを膨らませて待機しており、「BCにつかまって深呼吸をして」と指示をくれます。私が呼吸を落ち着かせると、BCとフィンを装着してくれ、みんなとブイへ向かいました。私は自分勝手な行動で周りに迷惑をかけ、泣きそうな心境でしたが、なんとかOKサインを出し、全員で潜降を始めました。

しかしこの時の私はまだ、なぜあんなトラブルになったのか理解していませんでした。明らかなオーバーウエイトで、BCもフィンも付けずにENすれば沈むのは当然。そう知ったのは、EXしてからのことです。
潜降後、私たちは20分程度の水中散歩をしましたが、水中でも身体が沈んでしかたなかった私は、BCに何度も給気しました。そうして後半にさしかかり、ガイドが水深を上げ始めた頃だったと思います。今度は急に身体がどんどん上に引っ張られる感覚を感じます。みんなを眼下に見ながら、私はあれよあれよという間にガイドたちから遠ざかっていきます。「私だけ、急浮上している!」

原因も対処もわからず誰にも気づかれないまま止まらない急浮上

私はオーバーウエイトを調整するためにBCに空気を入れすぎ、吹き上げを起こしていたのです。しかし、この時もまだ、なぜ自分だけが急浮上するのか見当もつかず、私だけ違う流れにでもつかまったのかと思っていました。BCを排気する対処法も浮かばず、身体をヘッドファースト姿勢にして、必死に海底に向かってフィンキックをするばかり。「誰か気づいて! 助けてー!!」

私は急浮上が危険なことだけは覚えていたので、恐怖に震えながら「急浮上のときは息を吐き続ける」という対策だけは守ろうと、夢中で息を吐き続けました。その頃、ふと振り返ったガイドがようやく私の異変に気づきました。しかしもうすでに10m以上離れており、私は水面直前。ガイドはYさんたちを連れてその場で浮上を開始し、私を追いかけ始めます。その直後、私は水面に到着してしまいました。

しばらくしてガイドとYさんたちも水面に浮上し、私のBCをめいっぱい膨らませ、マスクとレギュレーターを取ってぐったりする私に深呼吸を促します。その後は、100mくらい離れていたボートが私たちを回収してくれて、なんとか全員無事にEXすることができたのでした。

1ダイブで2度もトラブルに見舞われた私は、EX後にはじめて5㎏のウエイトが重すぎたことを認識し、それがすべての原因だと知りました。この日は急浮上したこともあり、2本目はキャンセル。2日目はウエイトを4㎏にして、無事に2ダイブを楽しむことができました。

PADIコースディレクターからのコメント

基本事項はしっかり押さえて浮力チェックを怠らず適正ウエイトでダイビング

今回のケースは、環境や器材が変わったときの浮力チェックを行わず、浮力体やフィンなどをまったく身に付けずにエントリーしてしまったのが最初のトラブルの原因です。また、オーバーウエイトにもかかわらず、水中での浮力コントロールが遅れたことが、ダイビング後半に急浮上してしまった原因です。


Cカード講習でも習うとおり、万が一のときには、ウエイトは捨ててしまって構いません。また、オーバーウエイトでのダイビングの場合、浅いほうへ戻る際のBCの浮力コントロールは、いつもよりもこまめに様子を見ながら 排気する必要があります。周囲や深度計、ダイブコンピュータに留意して、浮力のコントロールをしてください。


初めての環境で何も身に付けずにエントリーするなんて言語道断です。基本に立ち返って、初めての器材、初めての環境の場合は、適正ウエイトのチェックをする習慣をつけましょう。

トラブル脱出体験談募集中! >>edit@diver-web.jp

内容を簡単に記入のうえ、本誌「危機からの脱出係」まで。ハガキ、封書、FAXでも応募可。採用のかたはこちらから連絡いたします。

アドバイザー

我妻 亨(わがつま・とおる)さん
静岡県・浜松市のダイビングショップ<ダイブテリーズ>のオーナー。世界中のPADIプロフェッショナルの1%にも及ばないPADIコースディレクターの資格を有する。ダイビング歴35年、数々のダイバーのトレーニングや育成に携わっている。

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